前回の記事では、火災保険料がなぜ上がってきたのか、保険期間が最長36年から現在の5年へ短縮されてきた背景などを取り上げました。

では、そもそも私たちは高くなった火災保険で、何に備えているのでしょうか。

「火災保険」という名前から、家が火事になったときの保険というイメージを持っている方も多いと思います。

しかし、現在の火災保険は火事だけに備える保険ではありません。

台風で屋根が壊れた。
落雷で家電が故障した。
給排水管の事故で床が水浸しになった。
泥棒に窓を割られた。

契約内容によっては、こうした住宅のさまざまな損害も補償対象になります。日本損害保険協会も、現在の火災保険について、火災だけでなく風水災などの自然災害や盗難などによる建物・家財の損害を補償する保険と説明しています。

今回は火災保険シリーズ第2回として、「火災保険は実際にどこまで守ってくれるのか?」を、住宅で起こりそうな具体例から整理してみたいと思います。

結論から言うと、火災保険は「火事のための保険」ではなく「住まいに起きる偶然の事故や自然災害に備える保険」です。ただし何でも直してくれるわけではなく、水災と水濡れの違い、建物と家財の違い、そして経年劣化や地震は対象外という点を知っているかどうかで、いざという時の安心感がまったく変わってきます。

この記事でお伝えしたいこと

  • 火災保険は「火事だけの保険」ではない
  • 台風・落雷・水濡れ・盗難なども補償される場合がある
  • 「水災」と「水濡れ」はまったく別の補償
  • 「建物」と「家財」は別々に契約する
  • 経年劣化や通常の故障は、基本的に火災保険の役割ではない
  • 地震による火災は、原則として通常の火災保険では補償されない

※そして最後の2つは、火災保険を考えるうえで特に重要なポイントです。

火災保険は「住まいの事故」に備える保険

火災保険の一般的な補償を整理すると、おおむね次のようになります。

補償 住宅で考えられる例
火災 自宅から出火して建物が焼けた
落雷 落雷で住宅設備や家電が損傷した
破裂・爆発 ガス爆発などで建物が損傷した
風災・雹災・雪災 台風で屋根が破損、雹で窓などが損傷
水災 洪水・高潮・土砂災害などで建物が被害を受けた
水濡れ 給排水設備の事故などで床や壁が水浸しになった
物体の飛来・衝突 車が建物へ衝突した、飛来物で建物が壊れた
盗難 空き巣に入られ家財が盗まれた、窓やドアを壊された
不測かつ突発的な事故 物をぶつけて壁を壊したなど

ただし、ここで非常に重要なのが、「火災保険に入っている=全部補償される」ではないということです。

火災保険は商品や契約プランによって補償範囲が異なります。水災を外している契約もあれば、不測かつ突発的な事故を補償しない契約もあります。自己負担額(免責金額)が設定されている場合もあります。

ここからは、住宅で実際にイメージしやすい事故を見ていきます。

台風で屋根が壊れた。これは火災保険?

例えば台風の強風によって、

  • 屋根材が飛んだ
  • 雨樋が破損した
  • 外壁の一部が損傷した
  • 飛来物によって窓が割れた

といった被害が発生した場合です。こうしたものは、契約内容によって「風災」として補償対象になる可能性があります。

「火事じゃないのに火災保険?」と思われるかもしれませんが、これこそ現在の火災保険の大きな役割の一つです。住宅にとって現実的なリスクは火事だけではありません。むしろ長く家に住んでいれば、台風・豪雨・落雷などの自然災害に遭う可能性も考えておく必要があります。

落雷でテレビや住宅設備が壊れたら?

落雷も、火災保険の代表的な補償の一つです。雷が直接建物へ落ちるケースだけではなく、落雷の影響によって住宅設備などが損傷することもあります。

ただし、ここで一つ注意したいことがあります。

例えばテレビなどの家財が壊れた場合、建物だけを火災保険の対象にしていて、家財を契約していなければ、家財は原則としてその契約の補償対象にはなりません。

火災保険では「建物」と「家財」を分けて契約します。日本損害保険協会も、建物と家財についてそれぞれ別々に保険金額を設定して契約すると説明しています。この違いは意外と重要です。

「建物」と「家財」は何が違う?

簡単に考えるなら、家そのものなのか、引っ越すときに持っていくものなのかでイメージすると分かりやすいと思います。

建物には、一般的に住宅本体や、その建物に取り付けられている設備などが含まれます。一方、家財には、

  • テレビ
  • 冷蔵庫
  • 洗濯機
  • ソファ
  • テーブル
  • ベッド
  • 衣類

など、家の中で使っているものが含まれます。例えば火事で建物と家財の両方が焼けたとしても、建物しか契約していなければ、家財まで自動的に補償されるわけではありません。

住宅を購入するときは建物の保険金額に目が行きがちですが、「家財をどうするか」も確認しておきたいポイントです。

給排水管から水漏れ。これも火災保険?

これも誤解されやすいところです。

例えば2階の給排水設備で突然事故が起き、漏れた水によって、1階の天井や壁、床が水浸しになったとします。契約内容によっては、このような損害が「水濡れ」として補償される場合があります。

ただし、壊れた給排水設備そのものと、そこから漏れた水によって傷んだ床や壁は同じ扱いとは限りません。

多くの保険会社の案内でも、給排水設備事故による水濡れ損害を補償する一方、給排水設備自体に生じた損害は対象外とする契約が一般的です。ここは住宅会社の立場から見ても、非常に重要な違いだと思います。「水漏れしたから全部保険で直る」と単純に考えるのではなく、何が原因で、どの部分に損害が出たのかを分けて考える必要があります。

「水災」と「水濡れ」は同じではない

名前が似ているので混同されやすいのですが、水災と水濡れは別物です。

水濡れは先ほどのような、給排水設備の事故などによる水の被害です。一方の水災は、

  • 河川の氾濫
  • 洪水
  • 高潮
  • 豪雨による浸水
  • 土砂災害

など、主に自然災害による水の被害を対象とする補償です。

さらに水災については、契約によって支払条件が設定されている場合があります。つまり、大雨が降った=必ず水災補償が使えるという単純な話でもありません。

そして吹田で家を建てる、あるいは購入する場合、そもそも水災補償を付ける必要があるのか?これは地域によって考え方が変わります。吹田市でも、河川に近い地域、低地、高台では水害リスクが同じではありません。

この問題については、火災保険シリーズ第3回の「吹田で水災補償は必要?」で、吹田市のハザードマップなども確認しながら詳しく考えてみたいと思います。

泥棒に窓を割られた。盗まれた物だけが対象?

火災保険では、契約内容によって盗難による損害も補償されます。例えば空き巣に入られ、

  • 窓ガラスを割られた
  • 玄関ドアを壊された
  • 家財を盗まれた

というケースです。この場合も、建物への損害なのか、家財への損害なのかによって確認する契約が変わります。窓や玄関ドアは建物側、盗まれた家財については家財側の契約を確認する、という考え方です。

車が家に突っ込んできたら?

少し極端に聞こえるかもしれませんが、住宅街では実際にあり得る事故です。

車が運転を誤って住宅の外壁や門などへ衝突した。あるいは強風によって飛んできた物が外壁や窓へぶつかった。こうした事故も、契約内容によって「外部からの物体の飛来・落下・衝突」などとして補償対象になる場合があります。日本損害保険協会が示す総合型の火災保険でも、外部からの飛来物による損害は代表的な補償の一つとして挙げられています。

火災保険という名前だけを見ていると、なかなか想像しにくい補償だと思います。

家の中で「うっかり壊した」は補償される?

さらに補償範囲の広い契約では、不測かつ突発的な事故による破損が対象になる場合があります。

例えば、家具を移動していて誤って壁へぶつけ、壁を破損してしまった。こうしたケースです。実際、大手損害保険会社の案内でも、破損等リスクを補償する契約であれば、日常生活の中で物を落として傷を付けてしまった、掃除中に家電製品を落としてしまったといった偶然の事故が補償対象になり得ると案内されています。一方で、すり傷・かき傷・塗料のはがれ落ちなど、機能の喪失を伴わない単なる外観上の損傷は対象外とする契約が一般的です。

ですから、「うっかり壊したものは全部火災保険で直せる」という意味ではありません。この補償は特に商品差が大きいので、契約内容を確認する必要があります。

では、雨漏りは火災保険で直せる?

これも住宅会社としてよく注意したいところです。

例えば、築年数が経ってシーリングが劣化し、そこから雨水が入るようになったとします。こうした経年劣化そのものは、基本的に火災保険の役割ではありません。火災保険は、家のメンテナンス費用を出してくれる保険ではないからです。

日本損害保険協会も、自然の消耗や劣化、さび、かび、腐敗、ひび割れなどによって生じた損害を、一般的な火災保険の主な免責事由として挙げています。

一方で、台風で屋根の一部が破損し、その結果雨水が入ったという場合は、原因が突然の風災であれば話が変わる可能性があります。同じ「雨漏り」でも、なぜ雨漏りしたのかによって考え方が変わるわけです。ここは住宅の不具合を見るときにも非常に重要です。火災保険では、「どこが壊れたか」だけでなく、「なぜ壊れたか」を見る必要があります。

地震で火事になったら、火災保険では出ない?

そして、火災保険で最も知っておいてほしいことの一つがこれです。

例えば大きな地震が発生し、住宅が揺れた、家具が倒れた、そこから火災が発生して住宅が焼けた。「火事なんだから火災保険だろう」と思ってしまいそうですが、原則として違います。

地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする損害は、通常の火災保険では補償されません。地震によって起きた火災も同様です。

地震による火災や建物の損壊などに備えるためにあるのが、火災保険とセットで契約する地震保険です。ここは非常に分かりにくいところだと思います。では、地震保険には本当に入った方がいいのか?大阪北部地震を経験した吹田で考えると、これは一度きちんと整理しておきたいテーマです。火災保険シリーズ第4回では、「地震保険は必要?」を詳しく取り上げます。

火災保険は「家を何でも直してくれる保険」ではない

ここまで見ると、火災保険はかなり幅広い損害を補償してくれることが分かります。しかし私は、もう一つ重要なことがあると思っています。それは、火災保険を「家に何かあったら何でも直してくれる保険」と考えないことです。

基本的な考え方は、突然、偶然起きた事故や災害に備えるもの。一方、時間とともに建物が傷んでいく経年劣化や、通常必要になる維持管理は別の話です。

住宅は建てた瞬間から少しずつ年月を重ねていきます。外壁も、防水も、シーリングも、住宅設備も永久には使えません。火災保険と住宅メンテナンスは、役割が違います。ここを分けて考えておくことが、長く家を維持していくうえでは大切だと思います。

大切なのは「火災保険に入っているか」ではなく「何に入っているか」

住宅購入時には、「火災保険は入りました」で終わってしまうことがあります。しかし今回調べてみると、本当に大切なのは、火災保険に加入しているかどうかではなく、自分の契約が何を補償しているかを知っているかどうかだと改めて感じます。

  • 水災は付いているのか。
  • 家財は入っているのか。
  • 破損・汚損は対象なのか。
  • 自己負担額はいくらなのか。
  • どんな場合が対象外なのか。

同じ「火災保険」という名前でも、内容は同じではありません。一度、保険証券や契約内容を開いて確認してみると、「自分の家はここまで守られていたのか」と気付くことがあるかもしれません。逆に、「ここは入っていると思っていたのに、実は補償されていなかった」ということもあります。

保険料が上がっている今だからこそ、金額だけを見るのではなく、何にお金を払っているのかまで確認しておきたいところです。

よくある質問

Q. 火事を起こしていなくても火災保険は使えますか?
A. 使える場合があります。台風による屋根の破損、落雷による家電の故障、給排水設備の事故による水濡れ、盗難など、契約内容によって火事以外の損害も補償対象になります。

Q. 建物にしか火災保険をかけていません。家財が壊れたら補償されますか?
A. 原則として補償されません。建物と家財は別々に契約する仕組みのため、家財の被害に備えるには家財を対象にした契約が別途必要です。

Q. 経年劣化による雨漏りやひび割れも火災保険で直せますか?
A. 基本的に対象外です。自然な消耗や老朽化は火災保険ではなく住宅のメンテナンスの範囲となります。ただし台風などの突発的な原因で雨漏りした場合は補償対象になる可能性があります。

Q. 地震が原因の火災は火災保険で補償されますか?
A. 原則として補償されません。地震・噴火・津波を原因とする損害に備えるには、火災保険とセットで契約する地震保険が必要です。

次回予告

次回は、その中でも判断が難しい水災補償について、「吹田で水災補償は必要?」を考えます。

同じ吹田市でも、場所によって水害リスクは違います。「大阪だから大丈夫」「吹田だから大丈夫」と感覚だけで判断するのではなく、実際の地形やハザードマップを確認しながら、吹田の住宅会社として考えてみたいと思います。

※火災保険の補償内容、保険金の支払条件、自己負担額、対象となる建物・家財の範囲などは、保険会社・商品・契約時期・契約内容によって異なります。本記事は一般的な仕組みを解説したものであり、個別の保険金支払いを保証するものではありません。実際の事故については、ご加入の保険会社・代理店へご確認ください。

今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社、吹田の地で21年。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門など、現場の最前線で歩んできました。


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