普段歩いている道で、こんなことを感じたことはありませんか?

「ここ、ベビーカーだと通りにくいな」
「歩道が狭いな」
「この坂、けっこうきついな」

吹田市では現在、2027年度から2036年度までの10年間を計画期間とする「吹田市バリアフリー推進構想」の策定が進められています。

「バリアフリー」と聞くと、車いすを利用する方や高齢者のためのもの、というイメージを持つ方も多いかもしれません。ところが今回の構想を読んでみると、対象は駅だけではありませんでした。道路、公園、学校、公共施設、バス停など、普段の暮らしの中で使う場所そのものを、もっと移動しやすくしていこうという内容です。

この記事では、吹田の街がこれからどう変わっていくのかを、住まい選びの目線で見ていきます。

※この記事は、吹田市が公表している「吹田市バリアフリー推進構想(素案)」をもとに作成しています。素案の段階のため、今後内容が変更される可能性があります。

この記事のポイント(先に結論)

  • 吹田市は2027年度〜2036年度の10年間を計画期間とする「吹田市バリアフリー推進構想」を策定中(現時点は素案)
  • 対象は「駅とその周辺」から、道路・公園・学校・公共施設・バス停など、暮らしの中で使う場所全体へ拡大
  • 道路では約14.62kmでバリアフリー整備が必要とされ、歩道整備・無電柱化などが挙げられている
  • 直せない急坂には、事前に知らせる「バリアサイン」の設置も検討されている
  • 住まい選びでは、「駅徒歩◯分」に加えて「その道が歩きやすいか」も見ておきたい

「駅周辺」から「吹田市全体」へ広がる対象

吹田市ではこれまでも、鉄道駅とその周辺を中心にバリアフリー化が進められてきました。市内では、鉄道駅周辺の10地区・15駅を重点整備地区として設定し、駅や道路などの整備を進めています。

今回の構想で大きいのは、対象がさらに広がることです。

  • 学校施設(小中学校など)、駅前の複合公共建築物、事業予定のある都市公園を生活関連施設に新たに追加
  • すべての重点整備地区を一体化し、区域面積を拡大

つまり、「駅を使いやすくする」から「街の中を移動しやすくする」へ。バリアフリーの考え方が、暮らし全体に広がっているわけです。

吹田市のバリアフリー化は、すでにかなり進んでいる

今回が初めての取り組み、というわけではありません。吹田市では長年にわたって整備が進められてきました。2025年度末時点の整備状況は、次のとおりです。

項目 事業整備率
鉄道駅 約90%(※)
生活関連経路となる道路 約96%

※駅の整備率は、2023年度の見直しで加わった新規事業(可動式ホーム柵の設置)を含めた数字です。

それでも新しい構想をつくる理由は、「整備した場所」から「移動しやすい街全体」へ視点を広げるためだと私は受け止めています。

駅にエレベーターがあっても、そこへ向かう歩道が狭かったり、段差が多かったりすれば、移動しやすい街とは言えません。今回の構想は「駅の設備を増やす計画」というより、日常の移動そのものを見直す計画と考えると分かりやすいと思います。

約14.62kmの道路で、これから整備が必要

今回とくに注目したいのが道路です。

  • 生活関連経路として設定された道路の延長:全体で約64.93km
  • そのうち新たに設定された路線:16.32km
  • 新設定路線のうち、バリアフリー整備が必要とされる延長:約14.62km

予定されている整備内容は、かなり具体的です。

  • 歩道の全面整備
  • 舗装の更新
  • 視覚障がい者誘導用ブロックの整備
  • グリーンベルト
  • 無電柱化

「バリアフリー」という言葉からスロープやエレベーターを想像していた方には、少し意外かもしれません。

市民が感じているバリアは「段差」「狭さ」「坂」

吹田市のアンケートで、道路について困っていることとして多かったのは次の3つでした。

困っていること 割合
段差や亀裂がある 35.5%
幅や広さが狭い 34.7%
傾斜・起伏がある 24.6%

これは、車いすを利用する方だけの問題ではありません。ベビーカーを押すとき、子どもと一緒に歩くとき、自転車で走るとき、年齢を重ねて足腰が弱くなったとき。同じ道でも、その人の年齢や状況によって「歩きやすさ」は大きく変わります。

吹田市には坂の多い地域もあります。家を探すときに「駅徒歩10分」という数字だけで判断せず、実際にその10分を歩いてみることをおすすめしているのは、こうした理由からです。

電柱をなくすことも、実はバリアフリー

もう一つ興味深いのが無電柱化です。無電柱化というと「街並みがきれいになる」というイメージが強いかもしれません。

しかし吹田市の資料では、道路上の電柱や電線が、歩行者だけでなくベビーカーや車いす利用者の通行の妨げにもなる点から、無電柱化を進めるとされています。さらに、地震で電柱が倒れたり電線が切れたりすると、避難・救助活動や物資輸送の妨げになるおそれもあります。そのため幹線道路では、優先整備路線を定めて無電柱化を進める方針です。

無電柱化には、景観+歩きやすさ+防災という3つの意味があるということですね。

公園も「誰でも使いやすい場所」へ

子育て世帯にとって身近なのが公園です。今回の構想では、公園施設のバリアフリー化も取り組みの一つに位置づけられています。

関連する「吹田市公園施設再整備計画」では、2021年度から2032年度までに、50か所の都市公園で整備事業を計画しています。市民からは、ベビーカーや車いすが通れる出入口、園路の舗装、傾斜や段差、遊具、トイレなどの改善を求める意見が寄せられています。

遊具が新しくなるだけでなく、「誰でも入りやすく、動きやすい公園かどうか」という視点が、これからはより大切になりそうです。

「直せない坂道」は先に知らせる。「バリアサイン」という発想

今回の資料の中で、私がいちばん面白いと感じたのがこの取り組みです。

吹田には坂道が多くあります。地形そのものが原因の急坂や狭い道路は、すべてを工事で解消できるわけではありません。そこで、素案では地形などの制約で改修が困難な坂道の状況を事前に予告する「バリアサイン」の設置を検討するとされています。資料では、すでに設置している豊中市の「約300m先 急な下り坂」という案内が参考例として紹介されています。

すべてのバリアをなくすことだけがバリアフリーではありません。「ここにはバリアがあります」と先に知らせて、別のルートを選べるようにする。これも一つのバリアフリーの形だと思います。

鉄道駅の整備も引き続き進みます

もちろん、鉄道駅のバリアフリー化も続きます。構想では、次のような整備が計画されています。

  • エレベーター・エスカレーターの更新
  • ホームと車両の段差・隙間の縮小
  • ホーム柵の整備
  • 案内設備の充実
  • 視覚障がい者誘導用ブロックの整備

JR吹田駅のホーム柵整備については、以前の記事「JR吹田駅周辺のまちづくりが進行中。住む人には何が変わる?」でも詳しくご紹介しています。今回はそこから視野を広げて、駅だけでなく、駅へ向かう道と、その先にある公園・学校・公共施設まで含めて街を考えるのが大きなポイントです。

バリアフリーは「一部の人のため」ではない

今回の構想を読んで、バリアフリーという言葉のイメージが少し変わりました。

車いすを利用する方だけではありません。ベビーカーを押す人、小さな子ども、高齢者、一時的に足をケガしている人。そして、今は何の不自由もなく歩いている私たちも、年齢を重ねれば、同じ街の段差や坂道の感じ方は変わってきます。

住宅を探すとき、私たちは「駅まで徒歩何分」「小学校まで何分」「スーパーまで何分」という距離をよく確認します。でも本当の暮らしやすさは、「そこまで歩きやすいか」にも大きく左右されます。

2027年度から2036年度までの10年間で、吹田の道路・公園・駅・公共施設はどう変わっていくのか。家そのものだけでなく、その家のまわりの街がこれからどう変わっていくのか。それも、これからの住まい選びで見ておきたいポイントではないでしょうか。

よくある質問

Q. 吹田市バリアフリー推進構想とは何ですか?
A. 2027年度から2036年度までの10年間を計画期間として、吹田市が策定を進めている構想です(現在は素案の段階)。駅だけでなく、道路・公園・学校・公共施設なども対象に、暮らしの中の移動しやすさを高めていく内容です。

Q. 家探しでは、バリアフリーの視点をどう活かせばよいですか?
A. 「駅徒歩◯分」の数字だけでなく、実際にその道を歩き、歩道の幅・段差・坂の傾斜を確かめておくことをおすすめします。ベビーカーや将来の暮らしを想像しながら歩くと、図面では分からない違いが見えてきます。

Q. 無電柱化はバリアフリーと関係があるのですか?
A. あります。電柱や電線は、ベビーカーや車いす利用者の通行の妨げになることがあり、災害時には避難や救助の妨げにもなり得ます。景観・歩きやすさ・防災の3つの面で意味があります。

今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社、吹田の地で21年。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門など、現場の最前線で歩んできました。


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