結論から言うと、収納は「多ければ多いほど良い」わけではありません。収納として使う1帖も、LDKや個室として使う1帖も、建物にとっては同じ床面積です。収納を増やす前に、その1帖を何に使うのが一番暮らしやすいのか、私は打ち合わせのたびにお客様と一緒に考えるようにしています。

新築住宅の間取りを考えていると、どうしても増やしたくなるものがあります。それが収納です。

「玄関にはシューズクロークが欲しい」
「キッチンにはパントリーが欲しい」
「洗濯物をまとめてしまえるファミリークローゼットも欲しい」
「掃除機や日用品を入れる収納も欲しい」

どれも、あると便利そうなものばかりです。実際、収納が少なくて困るよりは、多い方が安心だと考える方も多いと思います。

ただ、間取りの打ち合わせをしていると、私はときどき感じることがあります。収納を増やすこと自体が目的になっていないでしょうか。

家の床面積には限りがあります。収納を1帖増やせば、その1帖はLDKや寝室、洗面室などには使えません。今回は、新築住宅の収納について、「収納は多ければ多いほどいいのか?」という視点から、私なりの考えをお伝えします。

この記事でお伝えしたいこと

  • ファミクロ・SCL・パントリー等の多用で膨らむ「収納面積(8帖=4坪分)」のリアル
  • 建築坪単価・建築費は収納1帖もLDK1帖もまったく同じという原則
  • ウォークイン・ウォークスルー形状に伴う「通路スペース」と実効収納量の落とし穴
  • 「集約する収納」と「使う場所の近くに置く収納」の理想的なバランス
  • 「収納が多い家」ではなく「物を片付けやすい家」を実現する間取り配分術

最近の新築住宅は、なぜ「収納したい場所」が増えているのか?

結論から言うと、収納の種類そのものが以前より増え、それぞれに家事動線上の役割を持つようになったことが理由です。

少し前まで、住宅の収納といえば各部屋のクローゼットや押入れが中心でした。ところが最近は、収納そのものの種類がかなり増えています。

例えば、

  • ファミリークローゼット
  • シューズクローク
  • パントリー
  • リネン庫
  • 階段下収納
  • ランドリールーム内収納
  • 土間収納

などです。それぞれに役割があります。玄関でコートやベビーカーを収納できれば便利ですし、食品や飲料をまとめて置けるパントリーも便利です。ファミリークローゼットをランドリールームの近くに配置すれば、「洗う → 干す → しまう」という家事動線を短くできます。

ですから、これらの収納自体が悪いわけではありません。問題は、全部欲しくなってしまうこと。だと私は考えています。

ファミクロ4帖+SCL2帖+パントリー2帖では、合計何帖になる?

結論から言うと、この3つだけで合計8帖、坪数にすると約4坪分になります。

例えば、

  • ファミリークローゼット4帖。
  • シューズクローク2帖。
  • パントリー2帖。

これだけで、合計8帖になります。おおよそ4坪分です。

「収納8帖」と聞くと、それほど大きく感じないかもしれません。しかし、8帖といえば一つの部屋として考えればかなり大きな空間です。

例えば、

  • 6帖の洋室 + 2帖の収納。
  • あるいは、LDKを18帖から22帖にする。
  • 洗面室やランドリーを広げる。
  • 小さな書斎をつくる。

そういった使い方ができる面積でもあります。つまり収納を考えるときには、「収納を増やすかどうか」ではなく、「その面積を収納に使うか、別の空間に使うか」という比較が必要になると、私は考えています。

収納の1帖とLDKの1帖、価値は違うのか?

結論から言うと、建物の床面積としてはまったく同じ1帖です。ただ、打ち合わせの場では受け止め方が違って見えることがよくあります。

当たり前の話ですが、収納の1帖とLDKの1帖は、建物の床面積としては同じ1帖です。ところが間取りを考えていると、「LDKをあと1帖広げる」と言われるとかなり大きな変更に感じるのに、「パントリーをあと1帖増やす」となると、意外と抵抗なく増やしてしまうことがあります。

しかし建物全体から見れば、どちらも同じ1帖です。例えば延床面積30坪前後の住宅であれば、1帖は決して小さな面積ではありません。

限られた床面積の中で、収納、LDK、洗面、ランドリー、個室、廊下、これらにどのように面積を配分するのか。この面積配分こそが間取りづくりだと、私は思っています。

帖数が多ければ、収納力も高いのか?

結論から言うと、確保した床面積のすべてに物を置けるわけではないため、帖数と実際の収納量は必ずしも一致しません。

例えば4帖のファミリークローゼット。4帖もあればかなり収納できそうに感じます。しかし、ウォークインタイプであれば、人が中に入るための通路が必要です。左右に洋服を掛ければ、その間には人が通れる幅を確保しなければなりません。

ウォークスルー型なら、そのファミリークローゼットは収納であると同時に、廊下の役割も持ちます。さらに出入口が増えれば、その部分には棚やハンガーパイプを設置できません。引き戸を設ければ、建具を引き込む側の壁が収納として使いにくくなる場合もあります。

つまり、4帖のファミクロ = 4帖分の収納 ではないのです。

シューズクロークも、広い方が収納力は高いのか?

結論から言うと、こちらも同じで、間取りの形状によっては小さい方がかえって収納力が高くなることもあります。

例えば2帖のシューズクロークを設けたとしても、中央には人が入るスペースが必要です。ウォークスルー型にして、「玄関 → シューズクローク → ホール」という動線をつくれば便利になります。ただし、その分だけ人が通るスペースも必要になります。

場合によっては、1.5帖の行き止まり型シューズクロークの方が、2帖のウォークスルー型より収納できるということもあり得ます。

収納は床面積だけを見るのではなく、棚を何m設置できるのか。収納として使える壁がどれだけあるのか。ここまで見ることが大切だと、私は考えています。

パントリーは、大きいほど便利なのか?

結論から言うと、大きさよりも「何を、どこで使うのか」を先に決める方が使いやすいパントリーになります。

パントリーも人気のある収納です。食品、飲料、調味料、キッチンペーパー、非常食、ホットプレートなどの調理家電、いろいろなものを収納できます。

ただ、パントリーを大きくすればするほど便利になるとは限りません。奥行きの深い棚をつくりすぎると、奥に何が入っているか分からなくなります。広すぎるパントリーでは、食品を取りに行くための移動距離が長くなることもあります。

場合によっては、大きなパントリーを一つつくるより、キッチンのすぐ横に使いやすい奥行きの収納を配置した方が便利ということもあります。ここでも重要なのは「広さ」ではなく、何を、どこで使うのか。だと私は思います。

「何でもファミクロ」は本当に便利?

ファミリークローゼットが人気になったことで、「家族の服は全部ファミクロに収納したい」というご希望も増えました。家事動線だけを考えれば、非常に合理的です。ランドリーの近くにファミクロをつくれば、洗濯物を各部屋へ運ぶ必要がありません。

しかし、家族全員の衣類を一か所に集めるということは、それだけ大きな収納が必要になります。さらに、バッグ、帽子、制服、仕事着、季節物、布団、スーツケースなどまで集め始めると、ファミクロはどんどん大きくなっていきます。

そこで私が一度考えていただきたいのが、本当に全部を一か所に収納する必要があるのか。ということです。

収納はまとめた方がいい?分散した方がいい?

結論から言うと、どちらか一方が正解ではなく、「まとめる収納」と「使う場所に置く収納」のバランスが重要です。

収納を一か所に集めることにはメリットがあります。一方で、使う場所の近くに収納するという考え方も重要です。

例えば、

  • タオルは洗面室。
  • 下着は脱衣室。
  • 掃除用品は廊下。
  • コートは玄関。
  • 食品はキッチン。
  • 子どもの学校用品はリビング周辺。

このように、その物を使う場所の近くに収納した方が、生活動線が短くなる場合があります。ファミリークローゼットを大きくして、家中の物を集約した結果、必要な物を取りに行くために毎回ファミクロまで歩く。それでは、必ずしも便利とはいえません。

収納は、「まとめる収納」と「使う場所に置く収納」をバランス良く考えることが大切だと、私は考えています。

収納計画は「何帖欲しい」から決めるべき?

結論から言うと、先に決めるべきは帖数ではなく「何を収納するのか」です。

収納計画を考えるとき、「ファミクロは3帖」「SCLは2帖」「パントリーは1.5帖」と、先に帖数を決めてしまうことがあります。しかし、本来は逆だと私は思います。まず考えるのは、何を収納するのか。です。

例えばシューズクロークなら、靴は何足あるのか。ベビーカーを置くのか。ゴルフバッグを置くのか。アウトドア用品を置くのか。コートも掛けるのか。それによって必要な大きさは変わります。

ファミクロでも同じです。衣類だけなのか。バッグも入れるのか。布団まで入れるのか。季節家電も入れるのか。収納したい物を先に整理すれば、本当に必要な収納量が見えてきます。

収納を1帖増やす前に、考えてほしいこと

結論から言うと、私がいつもお伝えしているのは「この1帖を収納に使うのと、別の場所に使うのと、どちらが暮らしやすいか」を比べてみることです。

間取りの打ち合わせで、「もう少し収納を増やしたい」となったとき、一度こんなふうに考えてみてください。この1帖を収納に使うのと、別の場所に使うのと、どちらが暮らしやすいだろう。

例えば、

  • ファミクロを3帖から4帖にする。それともLDKを1帖広げる。
  • パントリーを2帖にする。それともキッチン周辺の通路を広げる。
  • シューズクロークを大きくする。それとも洗面室を広げる。

こうやって比べてみると、「収納はこれくらいで十分かもしれない」という判断になることもあります。反対に、「この家族は衣類が多いから、LDKを少し小さくしてでもファミクロを大きくしよう」という答えになることもあります。

どちらが正しいという話ではありません。家族によって、1帖の価値が違う。ということです。

収納は多ければ多いほどいい?

結論から言うと、多ければ良いわけではありません。収納にも通路が必要ですし、建築費もかかります。

家づくりでは、「収納率は○%あった方がいい」「収納は多い方が後悔しない」という話を聞くことがあります。もちろん収納不足は暮らしにくさにつながります。しかし収納だけを増やしても、住みやすい家になるとは限りません。

収納にも通路が必要です。収納にも建築費がかかります。そして収納に使った床面積は、他の部屋には使えません。だからこそ大切なのは、必要な場所に、必要な量だけ収納をつくること。だと私は思います。

まとめ|「収納が多い家」ではなく「片付けやすい家」を

新築の収納を考えるとき、「収納を何帖つくるか」だけを見るのではなく、何を、どこに、どのように収納するのか。そこまで考えてみてください。

大きなファミリークローゼット。広いシューズクローク。大容量のパントリー。どれも魅力的です。しかし、それらをすべて大きくすれば、その分だけ建物も大きくする必要があります。あるいは、LDKや個室など別の空間を小さくする必要があります。

収納は多ければ多いほど良いのではありません。私が目指したいのは、「収納が多い家」ではなく、「物を片付けやすい家」。そのためには、収納の帖数だけではなく、家全体の面積配分と生活動線まで一緒に考えることが大切です。

新築の間取りを考えている方は、収納をもう1帖増やす前に、「この1帖、本当に収納に使うのが一番いいだろうか?」と、一度考えてみてはいかがでしょうか。

よくある質問(FAQ)

Q. 新築の収納は、床面積の何%くらいが目安ですか?
A. 一般的には延床面積の10〜15%程度が目安とされることが多いですが、家族構成や持ち物の量によって最適な割合は変わります。数字だけで判断せず、何を収納したいかを先に整理することをおすすめします。

Q. ファミリークローゼットとシューズクロークは、両方とも必要ですか?
A. 必須ではありません。家事動線や玄関まわりの持ち物量によって、どちらか一方を優先した方が暮らしやすくなる場合もあります。

Q. 収納を増やす分、LDKや個室が狭くなるのは避けられませんか?
A. 建物の延床面積を変えない限り、収納を増やせばどこかの空間は狭くなります。延床面積自体を広げる、収納の配置や形状を工夫して無駄な通路を減らす、といった方法で調整できる場合もあります。

Q. 収納計画は、間取りのどの段階で決めるのが良いですか?
A. 間取りの初期段階で、持ち物のリストアップと合わせて検討するのがおすすめです。後から収納を追加しようとすると、LDKや個室の面積を削ることになりやすいためです。

今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社。新築営業からキャリアをスタートし、リフォーム・メンテナンス、賃貸、建築の各部門を経て、現在はマーケティング担当として吹田市の家づくり情報を発信しています。


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