前回の記事では、「隣の家は地盤改良したのに、うちは不要?」という疑問をきっかけに、地盤調査や地盤改良の考え方についてお話ししました。

そのとき最後に少しだけ触れたのが、「地盤改良した家を、30年後、40年後に建替えることになったらどうなるのか?」というテーマです。

家そのものは、もちろん解体できます。では、その家を支えるために地中につくられた柱状改良体は、どうなるのでしょうか。

実はここに、「地盤改良は、家を建てるときだけの話ではない」という、意外と知られていないポイントがあります。今回は、柱状改良を行った土地を将来建替えるときに何が起こるのか、できるだけ分かりやすく整理してみます。

この記事でお伝えしたいこと

  • 柱状改良体の仕組み(現地土とセメント系固化材の攪拌による円柱体)
  • 建物を解体しても地中に残り続ける改良体と30年後の建替え時の課題
  • 建替え時の3大選択肢(①既存利用、②残置、③撤去・埋戻し)のメリットとリスク
  • セメント協会データに見る改良体の長期安定性(10年〜22年の強度推移)と再利用実例
  • 将来の建替え・土地売却トラブルを防ぐ「地盤調査報告書・施工記録」の永久保存

そもそも「柱状改良体」とは?

戸建住宅の地盤改良で使われる代表的な方法の一つが、柱状改良です。一般的には、地中の土とセメント系固化材を攪拌し、地中に円柱状の改良体をつくることで住宅を支えます。

「地盤に杭を入れる」という言い方をされることもありますが、既製のコンクリート杭をそのまま地中に打ち込む工法とは仕組みが違います。

その場所の土をセメント系固化材と混ぜ、地中に強固な柱状の地盤をつくる。これが柱状改良体の基本的なイメージです。セメント協会の施工資料でも、固化材を注入しながら地中を攪拌し、柱状改良体を造成する施工方法が示されています。

家を解体しても、柱状改良体はなくならない

ここが今回、まず押さえておきたいポイントです。

住宅を解体すると、基礎や建物本体は撤去できます。しかし、地中につくられた柱状改良体は、建物を解体しただけで自然になくなるものではありません。地中には、以前の住宅を支えるためにつくられた改良体がそのまま残ります。

すると建替えのタイミングで、「この既存の柱状改良体をどうするのか?」という、新しい検討が必要になってきます。

30年後の家が、今の家とまったく同じ場所、同じ大きさ、同じ構造になるとは限りません。建物を少し移動するかもしれません。2階建てから3階建てにするかもしれません。基礎の配置も荷重条件も変わる可能性があります。だからこそ、昔施工した柱状改良体と、新しく建てる住宅との関係を、あらためて考える必要が出てくるのです。

建替え時には「使う・残す・撤去する」を考える

建替え時の地中構造物については、大きく分けると、

  • ①既存のものを利用する
  • ②利用せず地中に残す
  • ③撤去する

という選択肢があります。

国土交通省も既存杭について、「再利用」「残置」「撤去・埋戻し」という対応を整理しています。ただし、ここでいう既存杭と住宅の柱状改良体はまったく同じものではありませんので、そのまま同一視はできません。

柱状改良体についても、実際には土地の状況、新しい建物の計画、既存改良体の位置や性能などを一つひとつ確認しながら、個別に判断していくことになります。

①昔の柱状改良体をもう一度使うことはできる?

実は、既存の柱状改良体を新しい建物に活用した事例もあります。

セメント協会が紹介している栃木県の事務所棟の建替え事例では、以前の建物のためにGL-1mからGL-8mまで柱状改良体が施工されていました。建替えにあたり、既存柱状改良体の設計・施工記録が保存されていたことから、まずその仕様を確認。さらに、

  • 平板載荷試験
  • コアボーリングによる品質確認

などを行い、既存の改良体が新しい建物にも活用できることを確かめたうえで、必要な位置に新しい柱状改良体を追加しています。

つまり、「一度使った柱状改良体は、建替え時には必ず捨てるもの」とは限らないわけです。ただし、「残っているから、そのまま使える」わけでもありません。ここが非常に重要なところです。

「30年前のものだから、もう使えない」とも限らない

では、数十年前につくられた柱状改良体は、古くなって弱くなっているのでしょうか。これも、一概には言えません。

セメント系固化材を用いて実施工された直径0.6m、長さ3mの柱状改良体を10年間追跡した研究では、試験した条件下で一軸圧縮強さは10年まで増加傾向を示し、物理的・化学的な劣化を伴う変状も確認されなかったと報告されています。さらにセメント協会では、材齢22年まで追跡した改良体についても、長期的な安定性を確認しています。

だからといって、「柱状改良体は何十年たっても絶対に大丈夫」という意味ではありません。地盤条件、土質、固化材、施工方法、品質などは、現場ごとに違います。

建替え時に大事なのは、「古いか新しいか」だけではなく、その改良体が今どのような状態で、新しい建物を支える性能が確認できるかどうかということなんです。

ここで重要になるのが「昔の施工記録」

先ほどの再利用事例で、非常に大きなポイントになっていたことがあります。それが、既存柱状改良体の設計・施工記録が保存されていたことです。

例えば、

  • どこに施工したのか
  • 何本施工したのか
  • 改良体の直径
  • 改良深度
  • 固化材や配合
  • 施工管理記録
  • 品質確認資料

こうした資料が残っていれば、将来建替える際の大切な判断材料になります。反対に30年後、「昔、確か地盤改良したはずです」という記憶だけしか残っていなければ、再利用を検討するにも確認作業がぐっと増えてしまいます。

私も長年この業界で仕事をしていて感じるのですが、家を建てると確認済証や図面、保証書などは大切に保管していても、地盤調査報告書や地盤改良工事の施工資料は、意外と忘れられがちです。しかし将来のことを考えると、

地盤調査・地盤改良の資料も、家の重要書類として長期間保管しておく

ことを、私は強くおすすめしたいと思います。これは今回の記事で、一番覚えておいていただきたい実用的なポイントの一つです。

②使わず、そのまま地中に残す方法もある

既存の柱状改良体を新しい住宅の支持には使わず、地中に残した状態で新しい建物を計画する、という考え方もあります。

ただし、その場合にも、既存の改良体が新しい基礎や地盤補強の邪魔にならないかを確認しておく必要があります。

国土交通省が既存杭について整理した資料でも、既存杭を残置する場合、新しく施工する杭の位置が制約され、建物の設計自由度に影響する可能性が指摘されています。

柱状改良体にそのまま同じ結論を当てはめることはできませんが、地中に既存のものが残っていれば、新しい建築計画との位置関係を確認する必要があるという考え方は、共通しています。今の家では問題にならなくても、将来建物の位置や大きさを変えたときに、初めて問題として表面化することもあるわけです。

③では、全部撤去してしまえばいい?

そうなると、「邪魔になるなら、古い柱状改良体を全部撤去すればいいのでは?」と思われるかもしれません。確かに、既存の改良体を撤去するという選択肢もあります。

しかし、地中にあるものを取り除いたからといって、土地が施工前の状態へ完全に戻るわけではありません。国土交通省は既存杭の撤去について、撤去後に原地盤が緩み、建替え建物や隣接建築物、埋設物などへ影響を及ぼす可能性を課題として挙げています。

もちろん、杭を引き抜く場合と柱状改良体を撤去する場合とでは、施工方法が異なります。それでも、地中にあったものを撤去した後、その部分をどう埋め戻し、新しい建物を支える地盤としてどう評価するのかという新たな問題が生まれます。つまり、「撤去すれば全部解決」というわけでもないのです。

建替え時には、新しい家のためにもう一度判断する

ここまで読むと、「結局、どうすればいいの?」と思われるかもしれません。答えは、実はそれほど複雑ではありません。

建替え時の建物計画と地盤条件を確認して、その時点でもう一度判断する。これに尽きます。

  • 既存柱状改良体が活用できるなら、活用する。
  • 支障がなければ、残すことを検討する。
  • 新しい建築の障害になるのであれば、撤去などを検討する。
  • そして必要に応じて、新しい地盤補強を設計する。

30年前に行った地盤改良が、そのまま30年後の住宅への答えになるわけではない、ということですね。

実は2026年現在も、住宅業界で検討が続いているテーマ

この問題は、一部の特殊な住宅だけの話ではありません。一般社団法人住宅生産団体連合会では、既存の地盤補強体について継続的に検討が行われています。

2026年7月の基礎・地盤技術検討WGでも、「小規模建築物における既存地盤補強体の対応方法(案)」の作成状況について、報告・意見交換が行われています。

つまり、住宅を建替える際、過去に施工された地盤補強をどう評価し、どう扱うのかという問題は、2026年の今も、住宅業界で対応方法の整理が進められているテーマなんです。これは裏を返せば、「建替えならこうする」という決まった一つの答えが、まだない話ということでもあります。

土地を売ることになった場合は?

もう一つ、考えておきたいのが、建替えではなく、土地を売却する場合です。

地中に以前の建物の杭などが残っていたことをめぐって、過去には不動産売買のトラブルや裁判になった事例もあります。ただし、「地中に何か残っている=必ず契約不適合になる」という単純な話ではありません。実際の裁判例でも、予定する建物の建築に既存杭が支障となったケースでは問題とされた一方、旧建物の杭が残っている可能性について契約前に説明されていたケースでは、買主側の請求が認められなかった例があります。

これらは柱状改良体そのものを争った事例ではないので、直接同じ扱いになるとは言い切れません。ただ、地中に何が残っているのか分かっているなら、その情報や資料を次の所有者へきちんと引き継ぐことが大切という点は、住宅会社としても、ぜひお伝えしておきたいところです。その意味でも、やはり地盤改良工事の資料を保管しておく価値は大きいと感じます。

地盤改良は「建物を壊したら終わり」の工事ではない

前回の記事では、地盤改良は「やればやるほど安心」というものではなく、その土地と建物に必要な対策を適切に行うことが大切とお伝えしました。今回、将来の建替えまで視野を広げてみると、その意味がさらによく分かってきます。

必要な土地であれば、もちろん適切な地盤改良を行う必要があります。一方で、柱状改良を行えば、その改良体は建物を支えている間だけの存在ではありません。住宅を解体したあとも土地の中に残り、次の建築計画に関係してくる可能性があるということです。

だからこそ地盤改良は、「とりあえずやっておけば安心」ではなく、必要性をきちんと判断し、適切な方法を選択することが大切だと、私は考えています。

まとめ|30年後のために、今日できること

地盤改良した住宅を30年後に建替えるとき、「柱状改良体は必ず撤去」というわけではありません。反対に、「昔の柱状改良体をそのまま使えばいい」とも言えません。

建替え時には、

  • 既存改良体の位置や仕様
  • 現在の状態
  • 新しく建てる住宅の位置
  • 建物の大きさや構造
  • 基礎計画
  • 現在の地盤状況

などを確認し、再利用するのか、残すのか、撤去するのかを、あらためて検討することになります。

そして、今まさに家を建てようとしている方にも、できることがあります。それは、地盤調査報告書と地盤改良工事の施工資料を、大切に保管しておくこと。

30年後、40年後。その土地を、自分たちが建替えるかもしれません。子ども世代が建替えるかもしれません。あるいは、別の誰かへ土地を売ることになるかもしれません。そのとき、「この土地の下に何があるのか」を知るための資料が残っていることは、大きな意味を持ちます。

家づくりでは、完成した瞬間だけでなく、その家をいつか解体したあとの土地まで考えてみる。地盤改良という工事には、そんな長い時間軸で考える視点も必要なのかもしれません。

今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社、吹田の地で21年。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門など、現場の最前線で歩んできました。


■ 1日でも早く、理想の暮らしへ 🏃💨
好条件の物件は、検討される方が重なる傾向にあります。
「まずは話を聞いてみたい」という気軽な気持ちで、一歩踏み出してみませんか?

【公式LINEで気軽に相談】
物件の詳細や、内覧のご予約はLINEが一番スムーズです。
👉 https://lin.ee/HTvVmlL

【アイワホーム公式サイト】
施工事例を見て、新しい暮らしのイメージを膨らませてください。
👉 https://aiwahome.com/

■ 吹田の「今」をチェック!
吹田を愛する私たちが運営する、地元の耳寄り情報サイトです。

吹チャン!: https://suichan.jp/ 📢

■ 公式SNSでルームツアー公開中 🎥
Instagram: https://www.instagram.com/aiwahomesuita/

YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC4TWLt5U3X3ls6mDPsYIY8A

アイワホーム株式会社
本社:大阪府吹田市高浜町9-9 アイワステーションビルⅤ号館
フリーダイヤル:0120-359-395
※創業36年、吹田の地で家族の暮らしに寄り添う住まいづくりを。吹田で家を建てるなら、地域を知り尽くしたアイワホームへ。

アイワホームの
建売・分譲地

吹田にこだわった厳選物件 を
日々更新中です
気になる物件は 今すぐご見学予約を 
おススメします!