「シロアリ」と聞くと、どんなイメージがありますか?
家の柱や土台を食べる。
見つかったら大変。
放っておくと家がボロボロになる。
住宅にとって厄介な存在なのは確かです。
でも、そもそもシロアリはなぜ家を食べるのでしょうか。
実はシロアリは、人間の家を狙って生活しているわけではありません。本来は森の中で枯れ木などを分解している生き物です。ところが人間は、そのシロアリが食べる「木」を使って家を建てています。
今回は、知っているようで意外と知らないシロアリという生き物の正体を少し深掘りしてみます。
この記事でお伝えしたいこと
- シロアリはアリではなく「ゴキブリ目」に属する昆虫という意外な事実
- 腸内微生物の協力で木材成分「セルロース」を分解する仕組み
- ヤマトシロアリ・イエシロアリ・アメリカカンザイシロアリ(乾材)の生態差
- コンクリートや断熱材にも穴を開けて木材へ到達する侵入経路(蟻道)
- 「ヒノキなら絶対に安全」の誤解と、自然界の分解者としての本来の姿
実は「アリ」の仲間ではありません
まず、いきなり意外な話から。
シロアリという名前なので、「白いアリの仲間」だと思っている方も多いと思います。
実は違います。シロアリは現在の分類ではゴキブリ目に属する昆虫です。つまり、生物学的にはアリよりもゴキブリに近い仲間ということになります。
もちろん、家の中を走り回るあのゴキブリとシロアリが同じ生態という意味ではありません。ただ、進化の系統で見ると近い関係にあります。
普通のアリと見比べてみると、姿にも違いがあります。シロアリの羽アリは胴体にあまりくびれがなく、触角は数珠のような形。さらに4枚の羽がほぼ同じ大きさです。一方、一般的なアリは腰が細くくびれ、触角が曲がっていて、前の羽の方が大きくなっています。
名前は似ていますが、実はまったく違う昆虫なんですね。
シロアリはなぜ木を食べられる?
そもそも木というのは、簡単に消化できる食べ物ではありません。木材の主な成分のひとつにセルロースがあります。人間が木をかじっても栄養にできないのは、このセルロースをうまく分解できないからです。
では、シロアリはなぜ大丈夫なのでしょうか。秘密はお腹の中にあります。
シロアリの腸内には、木材を分解するのを助ける微生物がたくさん暮らしています。シロアリ自身の働きと腸内の微生物が協力することで、分解しにくい木を栄養として利用できるのです。
言ってみれば、シロアリのお腹の中には、小さな「木材分解工場」がある。そんなイメージです。
では、なぜ人間の家まで食べる?
ここが今回の本題です。
シロアリからすると、「これは森の倒木」「これは人間の住宅の柱」という区別はありません。どちらも木です。
自然界では、倒れた木や枯れた植物を食べて分解しています。ところが住宅には、柱、土台、床組みなど、大量の木材があります。シロアリから見れば、条件さえ整えば住宅も立派な食料です。
つまり、シロアリが家を狙っているのではなく、人間がシロアリの食べられる材料で家を建てている。これが「シロアリはなぜ家を食べるのか?」への一番シンプルな答えです。
日本の住宅でよく問題になるシロアリ
日本には複数種類のシロアリが生息しています。その中でも住宅被害で特によく知られているのが、ヤマトシロアリとイエシロアリです。名前は似ていますが、生態にはかなり違いがあります。
ヤマトシロアリ
日本の広い地域に分布しています。湿気のある場所を好むため、被害は住宅の下部に出やすい傾向があります。床下や土台、浴室・洗面など水回り周辺で被害が見つかることがあります。
イエシロアリ
こちらはさらに強力です。大きな巣を作り、そこを拠点に広い範囲へ活動します。特徴的なのが、自分たちで水を運べること。そのため、地面から離れた場所や比較的乾燥した木材まで被害が広がることがあります。住宅全体へ被害が及ぶ可能性もあり、住宅害虫として非常に警戒されているシロアリです。
乾いた木なら大丈夫……とも限らない
「シロアリは湿った場所にいる」というイメージがあります。確かにヤマトシロアリなどは湿気を好みます。
ところが、世の中には乾燥した木材でも生活できるシロアリもいます。代表的なのが、アメリカカンザイシロアリです。名前の「カンザイ」は「乾材」。その名の通り、乾いた木材の中でも生活できます。地面とのつながりを必要とせず、家具などの木材にも被害が出ることがあります。
つまり、「床下が乾いているからシロアリは絶対大丈夫」と単純には言い切れないわけです。
シロアリの社会はかなり組織的
シロアリは一匹ずつバラバラに暮らしている昆虫ではありません。大きな集団で生活する社会性昆虫です。
巣の中には、女王、王、働きアリ、兵アリなど、それぞれ役割の違うシロアリがいます。働きアリは餌を集めたり、巣を作ったり、掃除したり、仲間に餌を与えたりします。兵アリは外敵から巣を守ります。
そして面白いのが、女王だけでなく「王」もいること。一般的なアリではあまりイメージしませんが、シロアリではオスとメスがペアになって巣を作り、王と女王になります。
種類によっては、一つの集団が非常に大きくなります。住宅の中で見かける数匹だけが問題なのではなく、見えないところに大きな集団が存在している可能性があるというのが、シロアリの怖いところです。
春になると突然「羽アリ」が出る理由
普段、シロアリを見る機会はほとんどありません。地中や木材の中など、光の当たらない場所で生活しているからです。
ところが、ある時期になると突然大量の羽アリが出てくることがあります。これは巣がいっぱいになって逃げ出しているわけではありません。成長した巣から新しい王と女王になる候補が飛び立ち、新しい巣を作るための旅に出ているのです。
ヤマトシロアリでは春ごろの日中、イエシロアリでは初夏の夜などに羽アリが飛ぶ傾向があります。住宅で大量の羽アリを見かけた場合は、「虫が入ってきただけかな?」で終わらせず、どこから発生しているのかを確認した方がいいでしょう。
シロアリはコンクリートまで食べる?
これもよく聞く話です。「シロアリはコンクリートまで食べる」という表現。これは少し違います。
シロアリがコンクリートを木材のような栄養として食べているわけではありません。ただし、基礎の小さな隙間、ひび割れ、配管まわり、コンクリートの継ぎ目などを利用して建物内部へ侵入することはあります。
そのため、「ベタ基礎だからシロアリは絶対に入らない」とも言い切れません。コンクリート造の建物でも、その内部に木材や家具などがあれば被害を受ける可能性があります。
木じゃない断熱材にも穴を開けることがある
これも少し意外な話です。シロアリによる被害は、木材だけとは限りません。断熱材など、シロアリにとって栄養にならない材料にも穴が開くことがあります。
ただし、「断熱材をおいしく食べている」というわけではありません。その先にある木材へ到達するために、通り道として穴を開けることがあるのです。
つまりシロアリは、食べられる物だけに触れるとは限らない。ここも住宅被害を分かりにくくする理由のひとつです。
ヒノキならシロアリに食べられない?
住宅では、「ヒノキはシロアリに強い」という話を聞くことがあります。確かに、ヒノキなど一部の樹種にはシロアリに対して比較的抵抗性のある部分があります。
ただし、「絶対に食べられない」わけではありません。木の種類だけでシロアリ対策が不要になる、という話ではないのです。家づくりでは樹種だけでなく、床下環境、侵入経路、防蟻対策、点検などを含めて考える必要があります。
シロアリ被害は、なぜ見つけにくい?
住宅にとってシロアリが厄介なのは、家を食べること以上に「見えないところで食べること」かもしれません。
シロアリは光や乾燥を避けて活動します。地面から住宅へ入るときには、蟻道(ぎどう)と呼ばれる土のトンネルを作ることがあります。さらに木材も、表面を残しながら内部を食べ進む場合があります。外から見ると普通の柱でも、中が傷んでいる可能性があるわけです。
だからこそ、「シロアリを見たことがない=シロアリはいない」とは限りません。
でも、自然界では「家の天敵」ではない
ここまで読むと、「やっぱりシロアリは悪いやつだ」と思うかもしれません。でも、自然界で見ると少し違います。
森では木が倒れます。そのまま永遠に残っていたら、枯れ木だらけになってしまいます。シロアリは、そうした木を食べて細かく分解し、自然へ戻していきます。つまりシロアリは、自然界の「分解屋さん」でもあります。森の中では重要な仕事をしている生き物なのです。
問題なのは、その分解能力を人間の家で発揮されること。森にいればありがたい存在。家に入ってくると困った存在。人間側から見れば、それだけの違いなのかもしれません。
シロアリは家を狙っているわけではありません
「シロアリはなぜ家を食べる?」
答えは、家だから食べているわけではない、ということです。
本来、シロアリは森の中で枯れ木などを食べ、分解しています。人間は、その木を加工して柱や土台にして、長い間同じ場所に置いています。シロアリからすれば、森にある倒木と住宅の柱に「これは人間の大切な家だから食べない」という区別はありません。
だから住宅では、シロアリが入ってから慌てるのではなく、
- 侵入させにくくすること
- 点検できるようにしておくこと
- 異変を早く見つけること
が大切になります。シロアリという生き物を知ると、なぜ住宅でシロアリ対策が必要なのかも、少し理解しやすくなるのではないでしょうか。
今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社、吹田の地で21年。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門など、現場の最前線で歩んできました。
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※創業36年、吹田の地で家族の暮らしに寄り添う住まいづくりを。吹田の暮らしに、いちばん近い住宅会社でありたい。
