吹田市で新築・注文住宅を手がけるアイワホーム マーケティングディレクター 今利之が、電気打ち合わせの現場で増えている「EV用充電コンセント」の相談について、住宅会社の視点から解説します。

最近、新築住宅の電気打ち合わせで少しずつ増えてきたご相談があります。

「EV用の充電コンセント、付けておいた方がいいですか?」

というものです。

今乗っている車はガソリン車。次の車もまだ決めていない。そう考えると、「EVを買ったときに付ければいいんじゃない?」と思われるのも当然です。

もちろん、EV充電設備は後からでも設置できます。ただ、住宅会社の立場から見ると、少し気になるところがあります。それは、EVの充電設備は、かなり速いペースで変わっているということです。

今回は、「とりあえず200Vコンセントを付けておけば安心」という話ではなく、これから何十年も住む家に、進化の速いEV充電設備をどう備えておくかを考えてみます。

この記事でお伝えしたいこと

  • 家庭用普通充電(3kW・6kW)の仕組みと充電時間の差(満充電目安の比較)
  • Tesla(最大9.6kW)やニチコン(最大9.9kW)など家庭用充電の高出力化トレンド
  • 家側設備だけでなく「車載充電器(オンボードチャージャー)」の受け入れ上限の壁
  • 後付け工事で直面する分電盤からの配線ルート難(露出配管や外壁貫通リスク)
  • EV未所持のご家庭こそ検討したい「空配管」や「先行配線ボックス」による将来への備え
  • 家全体の電力を賢くコントロールする負荷追従充電やV2Hの可能性

そもそも、自宅でEVはどうやって充電する?

EVの充電には、大きく分けて「普通充電」と「急速充電」があります。

高速道路のサービスエリアなどで見かける大きな充電器は、短時間で大量の電気を送る急速充電。一方、戸建住宅で一般的なのは、夜に車を停めている間にゆっくり充電する普通充電です。

現在、家庭用の普通充電ではAC200Vを使った3kWや6kWクラスが一般的です。パナソニックの家庭用充電器「ELSEEV」シリーズにも、3kW・4.8kW・6kWの3タイプが用意されています。6kWタイプは定格30A・200Vです。

100Vでも充電できるEVはありますが、充電速度はかなり遅くなります。トヨタもbZ4Xについて、100V充電は電圧低下時に充電が止まる可能性もあるため「緊急用」と案内しています。

3kWと6kW、そんなに違う?

例えばトヨタbZ4Xの場合、普通充電で満充電にする目安は、200V・3kWで約23時間、200V・6kWで約13時間とされています(バッテリー残量や気温などの条件によって変わる理論値です)。

8時間充電した場合の理論値で比べても、3kWなら24kWh、6kWなら48kWhと、単純計算で倍の差になります。

以前のようにバッテリー容量が比較的小さいEVなら3kWでも十分だったかもしれません。ところが、EVの航続距離が伸び、バッテリー容量が大きくなるにつれて、住宅側にもより速い充電能力が求められるようになってきました。

でも、6kWにしておけば将来も安心?

ここが今回、一番考えたいところです。

現在の日本では6kW普通充電がかなり現実的になっています。だから、「新築なら最初から6kW対応にしておけば安心」と思いたくなります。

ところが、すでに家庭向けでもその先があります。

Teslaの家庭用ウォールコネクターは、日本向けでも最大9.6kW・48Aに対応しています。ただし車両側の受け入れ能力は車種によって異なり、Model 3・Model YのRWDモデルは最大32A(6.4kW)までとされています。

また、ニチコンの家庭用トライブリッド蓄電システムでは、太陽光発電や蓄電池、系統電力を組み合わせ、条件によって最大9.9kWの高速充電を行う仕組みも登場しています。

つまり、充電能力はすでに、
3kW → 6kW → さらにその先
へ進み始めています。

これから建てる家には30年、40年と住みます。その間にEV充電設備がどう変わるのか、正確に予想するのは難しいでしょう。

高速道路の「150kW」とは別の話

ちなみに最近は、「150kW急速充電」という数字も見かけるようになりました。

経済産業省は、2030年に向けた充電インフラ整備の方針として、高速道路では90kW以上の急速充電器を基本とし、需要の多い場所には150kW級の充電器を配備していく考え方を示しています。

では将来、自宅にも150kWが必要になるのでしょうか。これは別の話だと私は考えています。

高速道路などでは、短時間で充電して次の車に交代する必要があります。一方、自宅では多くの場合、夕方に帰宅して翌朝まで車が停まっているため、数時間かけてゆっくり充電できます。ですから、公共の急速充電と、自宅で使う普通充電の「kW競争」は分けて考えた方がいいでしょう。

ただし、家庭用の普通充電そのものも高出力化が進んでいることは確かです。

充電器を大きくすれば、必ず速くなるわけではない

もう一つ重要なのが、家側だけ高出力にしても意味がない場合がある、ということです。

EVには「車載充電器(オンボードチャージャー)」が搭載されています。自宅から送られてくる交流電力を、バッテリーに蓄える直流電力へ変換する装置です。

例えば9.6kWの充電設備を付けても、車側の受け入れ能力が6kW程度なら、9.6kWでは充電できません。Teslaでも車種によって、車載充電器が6.4kWのものと9.6kWのものがあります。

つまり充電速度は、
家側の電源設備 × 充電器 × 車側の受け入れ能力
の組み合わせで決まります。「一番大きな充電器を付けておけばいい」というほど単純ではないのです。

では、新築時には何をしておけばいい?

ここまで読むと、「じゃあ結局、何kWで準備すればいいの?」となりますよね。

私は、これからの新築住宅では“何kWを正解にするか”だけを考えない方がいいと思っています。なぜなら、車や充電器は家より圧倒的に早く進化するからです。今最新の充電器を取り付けても、10年後には違うものが主流になっている可能性があります。

そこで大事になるのが、「将来、設備を変えられるようにしておく」という考え方です。

EVを買ってから工事すると、意外と大変なことも

完成した住宅に後からEV充電設備を付ける場合、分電盤から駐車場まで電源を持っていかなければなりません。近ければ比較的簡単ですが、住宅によっては、

  • 天井裏を通せない
  • 床下から目的の場所へ行けない
  • 外壁を貫通しなければならない
  • 外壁に露出配管が出てしまう
  • 駐車場の位置によって配線距離が長くなる

といったことが起こります。さらに高出力化すれば、必要になるブレーカー容量や配線も変わります。パナソニックの案内でも、6kW充電では30Aの電流が長時間流れるため40Aのブレーカーが必要とされており、住宅の電源容量によっては電力契約の見直しが必要になる場合があるとされています。

EVを買ってからでは「できない」のではなく、最初から考えていた方が圧倒的にやりやすい、という話なんです。

「太い線を入れておけば安心」でもない

将来を考えて、「だったら最初から太い電線を入れておけばいい」という方法もあります。もちろん一つの考え方です。

ただ、将来どこまで充電能力が上がるのか分からない以上、今決めた電線サイズが20年後にも十分とは限りません。必要な電線サイズは充電設備の仕様だけでなく、配線距離や施工方法、電圧降下などによっても変わります。

だから私は、電線そのものを未来予測するより、将来電線を入れ替えられるルートを確保しておく方が重要だと考えています。

今EVに乗っていないなら「空配管」という考え方もある

ここが今回、一番お伝えしたいポイントです。

今の車はガソリン車。EVを買うかどうかもまだ分からない。そんなご家庭なら、高価なEV充電器を新築時に取り付けて、10年間使わない可能性もあります。その間に設備が進化してしまうかもしれません。

それなら、

  • 分電盤側に将来の回路を考えておく
  • 駐車スペースまで配管ルートを確保しておく
  • 実際にEVを買ったとき、その時代の設備に合わせて電線や充電器を入れる

という考え方もあります。

実際にパナソニックには、あらかじめ太い電線(8mm²)を配線しておくことで、3kWの充電設備から将来的に6kW充電設備へ変更しやすくする「先行配線ボックス」という製品があります。メーカー側も、将来の充電設備変更を見据えた商品を用意しているわけです。これなら10年後、充電設備が変わっても対応しやすくなります。

将来は「もっと大きく」より「もっと賢く」かもしれない

もう一つ、EV充電の将来を考えるうえで面白い変化があります。単純に3kWから6kW、6kWから10kWへと大きくするだけではありません。家全体の電気使用量を見ながら、EVへの充電量を自動調整する方向も進んでいます。例えばTeslaのウォールコネクターには、住宅の利用可能な電力に合わせて充電出力を調整する電力管理機能があります。

つまり、

  • IHを使う
  • エアコンを使う
  • エコキュートが動く

その残りの電力でEVを充電する、といった制御です。将来の家は、「EVだけに何kW使えるか」ではなく、家全体で電気をどう振り分けるかを考える時代になるのかもしれません。

EVは「車」から「住宅設備」へ?

さらにV2H(Vehicle to Home)という仕組みがあります。EVに電気を入れるだけでなく、EVに蓄えた電気を家へ戻して使う仕組みです。

太陽光発電の電気をEVに蓄えたり、停電時にEVの大容量バッテリーから住宅へ給電したりできます。実際に現在のV2Hシステムでは、EVの充放電と住宅用蓄電池、太陽光発電を組み合わせた製品もすでに販売されています。

そうなるとEVは、単なる駐車場に置かれた車ではなく、住宅の電気設備の一部になっていきます。

「EVコンセントを付けるか」だけではなく、その先を考えておく

新築時に、「EVコンセント、付けますか?」と聞かれて、「今EVに乗ってないからいりません」で終わらせる。以前なら、それでもよかったかもしれません。

でも現在は3kWだけでなく4.8kW、6kW、さらに9kWを超える家庭向けの充電システムまで出てきています。これからさらに車も設備も変わっていくでしょう。

だからこそ、新築時に大切なのは、「今、どの充電器を付けるか」だけではありません。むしろ、将来どんな充電設備になっても、なるべく大きな工事をせず対応できる家にしておく。こちらの方が重要だと私は思います。

EVを買ってからでは遅い。でも、今のEVに合わせて充電器まで決め打ちする必要もない。

  • 分電盤から駐車場までどう電気を持っていくのか
  • 配管ルートは確保できるのか
  • 将来、電線を入れ替えられるのか

EVを買う予定がまだない方ほど、家を建てる今の段階で、そこだけは一度考えておいてもいいのではないでしょうか。

私自身、新築営業からリフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門まで現場の最前線を歩いてきましたが、「後から変えにくい部分こそ、最初に考えておく」というのは、電気配線に限らず住まいづくり全般に通じる感覚だと感じています。

余談ですが、私自身は根っからの「EV派」というわけではありません。トヨタの豊田章男会長が以前、ガソリンの匂いやエンジン音、燃費の悪さも含めてクルマの魅力だと語っていたのを見たことがありますが、正直、その感覚に近いものがあります。効率だけでは測れない部分にクルマの面白さを感じるタイプなので、EVへの乗り換えを急いでいるわけではありません。だからこそ余計に、「EVを選ぶ人も、選ばない人も、後で困らない家」を考えておくことが大事だと思うのです。

※本記事は2026年9月時点の各メーカーおよび公的機関の情報をもとに作成しています。EV・PHEVの充電能力や充電規格、機器仕様は今後変更される可能性があります。実際の充電設備設計は、車種・機器仕様・電気契約・配線距離・施工条件等をご確認のうえ、電気工事業者等へご相談ください。

今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社、吹田の地で21年。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門など、現場の最前線で歩んできました。


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