先日、実際の住宅でパントリーの可動棚を設計していたときのことです。

パントリーの奥行きは柱芯々で600mm。扉はクローゼット型で、中には左右の棚柱を使った可動棚を5段設ける計画でした。

そこで少し迷ったのが、
「棚板の奥行き、何mmにするのが一番使いやすいんやろ?」
ということです。

パントリー自体には奥行きがあるので、450mmくらいの棚を付ければ収納量は増えます。でも、実際に置くのは調味料やレトルト食品、お菓子、乾物、収納ボックスなど。棚を深くしすぎると、今度は奥にある物が見えにくくなります。

300mmでは少し浅い気もする。
400mmなら十分そう。
では350mmはどうなのか。

今回は実際の設計をきっかけに、パントリーの可動棚は何cmくらいが使いやすいのか、メーカーの棚寸法や市販の収納用品も確認しながら考えてみました。

この記事でお伝えしたいこと

  • パントリー全体の空間寸法と「使いやすい棚板奥行き」の明確な違い
  • 深すぎる棚(450mm等)が招く「奥の食品の賞味期限切れ」リスク
  • 市販の収納ケース(ファイルボックス等)から逆算する350mmという最適解
  • 300mm・350mm・400mm・450mmの用途別使い分けガイド
  • 段ごとに奥行きを変える設計テクニックと水・米を置く際の耐荷重注意点

結論からいうと、食品中心なら30〜35cmが使いやすい

先に結論を書くと、パントリーの可動棚は、

  • 食品ストック中心なら奥行き300〜350mm程度。
  • 収納ケースや鍋なども置くなら350〜400mm程度。
  • ホットプレートや大型家電を置くなら450mm程度。

このあたりを目安に考えると使いやすいと思います。

もちろん「350mmにすれば絶対に正解」という話ではありません。

大切なのは、パントリーの奥行きに合わせて棚を決めるのではなく、棚に何を置くのかから奥行きを決めること。

今回の設計では、最終的に350mmがかなり使いやすそうだと考えました。

「奥行き60cmのパントリーだから棚も深く」は少し違う

まず注意したいのが、収納スペースの奥行きと棚板の奥行きは別だということです。

今回のパントリーは柱芯々で600mmあります。住宅の図面を見慣れていない方だと、「60cmあるなら、棚も50cmくらい取れるのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、600mmという寸法は壁の中心から反対側の壁の中心までの寸法です。実際には柱や石膏ボード、建具枠などがあるため、そのまま600mmを収納として使えるわけではありません。

さらに、たとえ物理的に深い棚を付けられたとしても、深ければ使いやすいとは限りません。

LIXILも収納について、スペースに余裕がある場合でも棚の奥行きは300〜400mm程度とし、手前側を背の高い物や一時置きスペースとして使う方法を紹介しています。現在販売されている「ぴったり棚」も、奥行き300mmと430mmの設定です。これは実際に収納を考えていても、かなり納得できます。

深すぎる棚は「入るけれど見えない」

例えば奥行き450mmの棚に、缶詰やレトルト食品、ふりかけ、パスタソースなどを置いたとします。物理的にはたくさん置けます。でも、奥行き10〜20cm程度の商品を並べると、どうしても前後2列になってきます。

すると、
「奥にツナ缶があったのに、また買ってしまった」
「賞味期限の切れたレトルトが奥から出てきた」
ということが起こりやすくなります。

パントリーで大切なのは、何個入るかだけではありません。何が入っているか分かること。取り出しやすいこと。使ったあと戻しやすいこと。ここまで含めて収納力だと思います。

棚板を10cm深くして置ける物が増えても、その奥にある物を使わなくなってしまえば、必ずしも使いやすい収納とはいえません。

300mmは食品ストックにはかなり使いやすい

奥行き300mmは、調味料や缶詰、乾物、お菓子、レトルト食品などを並べるには使いやすい寸法です。

ウッドワンの棚板も用途別に奥行きを設定しており、300mmは雑誌や小物など、400mmは鍋やフライパン、450mmは大きな箱などを収納する用途として紹介されています。棚が浅い分、収納物を一目で確認しやすいのもメリットです。

ただ、私が今回少し気になったのが収納ボックスでした。

食品を一つずつ棚に並べるだけなら300mmでも十分ですが、実際のパントリーでは、「お菓子」「乾物」「レトルト」「子どもの食品」など、カテゴリーごとにケースへ入れるご家庭も多いと思います。そこで市販品の寸法を見てみました。

収納ボックスまで考えると「350mm」が面白い

例えば無印良品の定番ファイルボックス。現在の商品寸法は奥行き約320mmです。このケースを奥行き300mmの棚に置けば、本体が20mmほど前へ出ます。使用上必ず問題になるわけではありませんが、最初から収納ボックスを使うことを想定するなら、少し余裕が欲しいところです。

棚板を350mmにすると、320mmのケースを置いても約30mmの余裕があります。これが、今回350mmを有力候補にした理由の一つです。

一方、無印良品の「やわらかポリエチレンケース」は奥行き約360mmの商品があります。こうしたケースを使いたい場合には、350mmでは少し出るため、400mm程度の棚のほうが納まりは良くなります。

つまり、300mmと400mmの中間だから350mmなのではありません。市販されている収納用品の寸法まで考えると、350mmという棚板は食品ストックと収納ボックスの両方に対応しやすい、かなり実用的な寸法だと思います。

30・35・40・45cm、どう使い分ける?

私はお客様とパントリーを考えるなら、おおむね次のように考えます。

奥行き300mm

調味料、缶詰、乾物、レトルト、お菓子など、食品ストックが中心。奥まで見渡しやすく、物を前後2列にしにくいのがメリットです。収納量より「見やすさ」を優先したい場合には使いやすい寸法です。

奥行き350mm

食品ストックに加えて、ファイルボックスなどを使って整理したい場合。今回私が一番バランスが良いと感じた寸法です。「何を置くかまだ細かく決めていないけれど、普通のパントリーとして使いたい」という場合にも選びやすいと思います。

奥行き400mm

少し大きめの収納ケース、鍋、キッチン用品なども収納したい場合。ウッドワンでも奥行き400mmの棚板を鍋やフライパンなどに適したサイズとして紹介しています。収納量を確保しながら、極端に深くしたくない場合には使いやすい寸法です。

奥行き450mm

ホットプレート、大型の鍋、箱物、小型家電などを置きたい場合。ただし、食品ストックだけの棚として450mm必要かと聞かれれば、私は「そこまで深くなくてもいいのでは」と考えます。ウッドワンの収納プランにも、同じ収納内で450mmと300mmを使い分けた例があります。つまり、すべての棚を同じ奥行きにする必要もありません。

家電を置く段だけ深くする方法もある

これは意外と大事な考え方です。例えば、

  • 上段は食品ストックなので350mm。
  • 中段にはホットプレートを置きたいので450mm。
  • 下部には飲料水や米を置く。

こういった設計もできます。

可動棚というと「棚の高さを変えられる収納」と考えがちですが、計画段階なら奥行きの違う棚板を組み合わせることもできます。「電子レンジを置くから全部450mm」ではなく、450mm必要なのは本当にその段だけではないか?と考えてみると、他の棚がぐっと使いやすくなることがあります。

水や米を置くなら、奥行きより先に耐荷重を確認

もう一つ、パントリーを設計する際に忘れてはいけないのが棚の強度です。

2Lのペットボトルを6本置けば、水だけで約12kg。そこにケースやほかの食品が加われば、棚にはそれなりの重量がかかります。お米、飲料、缶詰、調味料なども意外と重いものです。

だから、「奥行き450mmあるから水をたくさん並べられる」だけで判断するのは危険です。可動棚の耐荷重は、棚板の材質や厚み、幅、棚柱、ブラケット、取付方法などによって変わります。

例えばウッドワンの一部収納部材では、棚板1枚あたり20kgという耐荷重設定がありますが、これはあくまでその製品・施工条件での数値です。実際の住宅では、採用する棚板や金物の仕様を確認して設計する必要があります。特に水や米など重量物を収納する予定がある場合は、打ち合わせの時点で住宅会社に伝えておくことをおすすめします。

今回のパントリーなら、私は350mmにする

今回考えたのは、柱芯々600mm、クローゼット型扉のパントリーです。食品ストックが中心で、必要に応じて収納ケースも使う。そう考えると、私は奥行き350mmが使いやすいと思いました。

300mmでも食品収納としては十分。400mmでも悪くありません。でも、市販の収納ボックスのサイズ、棚の見やすさ、取り出しやすさ、収納量のバランスを考えると、今回の条件では350mmがちょうどいい。

もちろん、これがすべての家の正解ではありません。ホットプレートを入れたいご家庭。ウォーターサーバー用の水を大量にストックするご家庭。お菓子や調味料が中心のご家庭。パントリーの使い方はかなり違います。

だから私は、可動棚の奥行きを決めるときには、「棚を何cmにしますか?」から考えるのではなく、「ここに何を置きますか?」から考える。これが一番失敗しにくいと思っています。

家づくりの打ち合わせでは、間取りやキッチンの色など大きな部分にどうしても目が行きます。でも、実際に住み始めて毎日のように使うのは、こうした数cm単位の収納だったりします。

パントリーを計画している方は、図面上の奥行きだけを見るのではなく、一度ご自宅で使っている収納ケースや、入れたい家電の奥行きを測ってみてください。その寸法から逆算して棚を考えると、自分たちの暮らしに合ったパントリーが見えてくると思います。

今 利之(こん としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティング担当
2005年入社。新築営業からキャリアをスタートし、リフォーム・メンテナンス、賃貸、建築の各部門を経て、現在はマーケティング担当として吹田市の家づくり情報を発信しています。


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