アイワホームの今利之です。吹田市で住宅の仕事に携わって21年になりますが、ここ最近ほど「価格」についてお客様からご質問をいただく時期は珍しいと感じています。
中東情勢の影響により、原油やナフサを原料とする住宅設備・建材について、価格上昇や供給への不安が続いているためです。
そのような中、2026年7月10日、国土交通省は、日本向けの大型原油タンカー6隻を含む日本関係船舶22隻がホルムズ海峡を通過したと発表しました。
この一報を見て、「よかった。原油が日本に届く」と、ほっとされた方も多いのではないでしょうか。実際、私自身も第一報を聞いたときはそう感じました。
ただ、日々お客様と住宅価格や工期についてお話ししている立場から申し上げると、今回のタンカー通過だけで、「ナフサショックは終わった」と判断するのは、まだ早いというのが正直なところです。
今回は、ホルムズ海峡を通過した原油タンカーの状況と、ナフサ価格、住宅設備・建材、今後の住宅価格への影響について、現時点で分かっていることを整理してお伝えします。
日本向けの大型原油タンカー6隻が海峡を通過
国土交通省によると、2026年7月7日から9日にかけて、新たに日本関係船舶22隻がホルムズ海峡を通過しました。
その中には、日本向けの大型原油タンカー6隻も含まれています。乗組員の健康状態や船体にも、異常は確認されていないと発表されています。
報道によると、6隻が積載している原油は合計約180万キロリットルとみられ、約20日をかけて航行し、2026年7月末ごろに日本へ到着する見通しです。
また、中東情勢の緊迫化によってペルシャ湾内にとどまっていた日本関係船舶は、当初の45隻から4隻まで減少しました。
日本への原油輸送が少しずつ動き始めたという点では、供給不安を和らげる大きな一歩だと、私も受け止めています。
これで原油不足の心配はなくなった?
今回、複数のタンカーがホルムズ海峡を通過できたことは、日本の原油供給にとって好材料です。
ただし、「日本向けタンカーが通過した」ということと、「ホルムズ海峡の安全性が回復し、通常どおりの輸送が再開した」ということは、分けて考える必要があります。
ホルムズ海峡では、2026年7月に入ってからもタンカーへの攻撃や米国とイランの緊張の高まりが報じられています。
7月9日時点では、石油タンカーの航行が再び大幅に減少し、事実上の停止状態に近いとの分析も報じられました。
また、船舶そのものが通過できたとしても、海上保険料や輸送費の上昇、安全確保のための運航判断など、原油価格以外にも不安定な要素が残されています。
そのため、今回の通過は明るい動きではあるものの、原油輸送が完全に正常化したと判断するには、もう少し状況を見る必要があるというのが私の実感です。
原油が日本に届けば、ナフサ価格も下がる?
ナフサは、原油を精製する過程で作られる石油化学製品の原料です。
プラスチックや合成樹脂、塗料、接着剤、溶剤など、私たちの生活や住宅建築に欠かせないさまざまな製品の原料として使用されています。
原油の供給が回復すれば、ナフサの供給不安を和らげる要因にはなります。
しかし、ナフサ価格は、原油が日本に届くかどうかだけで決まるものではありません。
- 国際的な原油価格
- 円相場
- 国内外の製油所の稼働状況
- アジア地域のナフサ需給
- 海上運賃
- 船舶の保険料
- 国内外の在庫量
こうした複数の要因が重なって、ナフサの国内価格や調達環境が決まります。
さらに、原油が日本に到着してから、製油所での精製、原材料の製造、建材メーカーへの供給を経て、住宅設備や建材として流通するまでには一定の時間がかかります。
長年この業界で見積書と向き合ってきた立場から言えば、「原油タンカーが通過したから、ナフサ価格も建材価格もすぐに下がる」と考えるのは、まだ早いと感じています。
ナフサは住宅のどこに関係している?
ナフサから作られる石油化学製品は、住宅の目立たない部分も含め、さまざまな場所で使用されています。
- 断熱材
- 給排水管
- 樹脂製の住宅部材
- 防水材
- シーリング材
- 接着剤
- 塗料や溶剤
- 壁紙や床材
- 電線の被覆材
- キッチン、浴室、トイレなどの樹脂部品
2026年4月には、国土交通省と経済産業省が、中東情勢の影響によってシンナーなどの溶剤の調達が難しくなり、一部の住宅設備・建材の供給が滞っている事例があるとして、関係事業者に安定供給への協力を要請しました。
特定の建材だけの問題ではなく、ナフサや石油由来製品の価格・供給状況は、家づくり全体に広く関係しています。
吹田市内でお客様の家づくりに携わる中でも、住宅は多くの素材と部品によって成り立っていることを、改めて実感しています。
ナフサ価格が落ち着けば、住宅価格も元に戻る?
ナフサ価格が落ち着いたとしても、住宅設備や建材の価格が、同じタイミングで下がるとは限りません。
建材の価格には、原材料費だけでなく、次のような費用も含まれているからです。
- 電気代や燃料費
- 製造にかかる人件費
- 国内外の輸送費
- 梱包費
- 保管費用や在庫確保費用
- 為替変動への対応費用
- 将来の供給リスクへの備え
また、建材メーカーが価格を改定するまでには一定の時間がかかります。
原材料価格が下がったとしても、その変化がすぐに製品価格へ反映されるわけではありません。
一時的にナフサ価格が下落しても、電気代、人件費、物流費など、ほかのコストが高止まりしていれば、建材価格が以前の水準まで戻らない可能性もあります。
正直なところ、ナフサ価格だけを見て、今後の住宅価格の上昇や下落を判断することはできません。
これが、住宅の見積もりや価格交渉に長年立ち会ってきた私の率直な感想です。
ナフサショックは終わったのか?
今回、日本向けの大型原油タンカー6隻がホルムズ海峡を通過したことは、日本の原油供給にとって前向きなニュースです。
ペルシャ湾内にとどまっていた日本関係船舶が大きく減少したことで、一時期に比べれば、供給不安の改善につながる動きが見え始めたといえます。
しかし、今後も確認しなければならない要素は多く残されています。
- ホルムズ海峡周辺の安全性
- タンカーの通航量
- 国際的な原油価格
- ナフサ価格
- 円相場
- 海上運賃や船舶保険料
- 国内製油所や建材メーカーの稼働状況
したがって、現時点で「ナフサショックが終わった」と断定するのではなく、「供給不安の改善につながる動きが見え始めたものの、正常化を判断できる段階ではない」と捉えるのが適切だと、私は考えています。
アイワホームは、最新情報を正確にお伝えします
世界情勢や原材料価格、住宅設備・建材の供給状況は、日々変化しています。
一時的な価格変動や一つのニュースだけで、今後の住宅価格や供給状況を正確に判断することはできません。
私たちアイワホームでは、各メーカーや取引先から最新情報を確認しながら、住宅価格や工期、建材供給への影響を慎重に見極めています。
必要以上に不安をあおることも、十分な根拠がないまま「もう安心です」とお伝えすることもありません。
今後も新たな動きがあれば、内容を確認したうえで、吹田市で家づくりをご検討中の皆様に、できる限り分かりやすく、正確な情報をお届けしてまいります。
