JR吹田駅から南へ歩くと、千里ニュータウンとはまったく違う表情の街並みに出会います。内本町や南高浜町あたりの路地に入ると、車1台がやっと通れる程度の道が続き、向かいから車が来るとどちらかが待たなければならない場所も珍しくありません。
土地や中古住宅を探しているお客様から、こうした道を前に「この道、ずいぶん細いな」「車は通れるけど、家を建てるには問題ないのかな?」と聞かれることがよくあります。
なぜ吹田には、こうした細い道路が今も残っているのでしょうか。実はこれ、単に「昔からの街だから」というだけの話ではありません。吹田という街が、異なる時代につくられた市街地を重ねながら発展してきたことと、深く関係しています。
背景土地を購入する際には、この「道路の成り立ち」が、家を建てられるかどうか、どのくらいの大きさの家を建てられるかにまで影響することがあります。今回は、吹田の街の歴史から、建築基準法上の道路、セットバック、接道の話まで、実務の現場で見てきたことを交えながら掘り下げてみたいと思います。
この記事でお伝えしたいこと
- 吹田市内の「計画都市(ニュータウン等)」と「旧集落(旧街道沿い)」の歴史的背景
- 吹田市「空家等対策計画」に見る旧集落型エリア(内本町・高浜町・佐井寺・山田など)の特徴
- 建築基準法上の道路定義と「42条2項道路(みなし道路)」の仕組み
- セットバック(道路後退)による有効敷地面積の縮小と例外ルール(川・線路沿い等)
- 見た目が道路でも建築不可?「指定道路図」の注意点と43条2項認定・許可の注意点
吹田市全部の道路が細いわけではありません
まずお伝えしておきたいのは、「吹田市は道路が狭い街」というわけでは決してない、ということです。
例えば千里ニュータウン。1960年代から大規模に開発され、住宅だけでなく道路、公園、学校、商業施設なども総合的・計画的に配置された、現在の吹田を代表する計画都市の一つです。冒頭で触れた内本町や南高浜町周辺とは対照的に、道路にゆとりのある街並みが広がっています。
内本町や南高浜町周辺は、旧亀岡街道や旧吹田街道を中心に在郷町として発展した「吹田発祥の地」で、今でも古い民家や寺社、道標、路地が残っています。私は2005年にアイワホームへ入社して以来21年、リフォーム・メンテナンス、賃貸、建築の各部門を経て、ここ数年はマーケティング担当として吹田市内の土地情報に携わっていますが、南高浜町の分譲地の仕事で何度もこのエリアを歩くたび、区画整理された新しい街とはまったく違う空気を感じます。
つまり同じ吹田市でも、先に道路や区画を計画してから住宅を造った街と、昔から人が暮らしていた場所がそのまま現在の市街地になった街とがあるのです。この違いが、道路にもそのまま表れています。
吹田市も「旧集落には狭い道路がある」と整理しています
これは感覚的な話だけではありません。吹田市が2025年に改定した「吹田市空家等対策計画」では、市街地をいくつかのタイプに分類しています。
その中の「旧集落型」について、市は自然発生的に形成された地区で、狭い道路や密集した住宅地が見られる地域と整理しています。JR以南地域では内本町・高浜町・南高浜町などに旧集落や古いまちなみが残り、佐井寺1・2丁目にも旧集落があります。市の計画では、佐井寺の旧集落について「古いまちなみ」が残る一方、狭い道路も多いとされています。山田でも、旧街道沿いに旧集落が分布しています。逆に江坂や南吹田には、土地区画整理によって道路や宅地が整備されたエリアもあります。
旧集落、昔からの市街地、区画整理された街、ニュータウン――成立した時代も方法も異なる街が、この吹田では隣り合っているのです。道路を見ていると、その地域がどうやってできたのかが少しずつ見えてきます。
昔の道は「車が通るための道路」ではありませんでした
吹田の旧集落ができた時代、自動車はまだありません。人が歩く、荷物を運ぶ、家から田畑へ向かう、隣の集落へ移動する――そうした生活の中でできた道です。現在のように「道路幅を何m確保して、その両側に宅地を配置しましょう」と最初から設計されたものではありませんでした。
その後、鉄道が開通し、大阪近郊の住宅地として発展し、高度経済成長期にはさらに宅地化が進みました。しかし、すでに家が建ち、人が暮らし、それぞれに土地所有者がいる街を、一度更地にして道路から造り直すことはできません。だから、昔の道を残しながら、その周囲が現代の住宅地になった場所がある。これが吹田で細い道路を見かける大きな理由の一つだと、私は理解しています。
幅4m未満の道の前でも家を建てられるの?
ここからは、土地購入に直結する話です。建築基準法では、建築物の敷地は原則として建築基準法上の道路に2m以上接している必要があります(接道義務)。また建築基準法上の道路は、原則として幅員4m以上です。
「では幅3mの道沿いに建っている昔の家はどうなるの?」と思われるかもしれません。建築基準法のルールが適用される前から、幅4m未満の道沿いに家が建ち並んでいた地域は全国に存在します。そこで一定の条件を満たす昔からの道については、特定行政庁が指定することで、幅4m未満でも建築基準法上の道路として扱う制度があります。これがいわゆる「建築基準法第42条第2項道路」、通称2項道路です。
2項道路なら「セットバック」が必要になることがあります
例えば前面道路が幅3mの2項道路だったとします。原則として、基準となる道路の中心線から両側2mの位置を道路境界とみなし、建替えなどの際にはその範囲まで建物や門、塀などを後退させます。これがセットバックです。
ここで一つ補足させてください。このセットバックのルールには例外があります。前面道路の反対側が崖地、川、線路などになっている場合は、中心線からではなく、反対側の境界線から4m後退するという扱いになります。吹田市内でも、旧集落沿いの道が川や線路と隣接している箇所は実際にありますので、「必ず道路の真ん中から2m」と単純に考えるのは危険です。
吹田市では、2項道路の後退位置について、原則「基準時の幅員の中心線」から判断します。ここで大事なのは、今見えている道路の真ん中から2m測れば終わり、とは限らないということです。市は市道の管理幅員、現地の状況、過去の建築計画概要書などを参考に、基準時の幅員を総合的に判断しており、後退位置の調査には一定の期間を要することもあります。私も過去にこの調査で想定より時間がかかり、お客様のスケジュールを調整させていただいたことがありました。
「土地80㎡」でも80㎡すべてを同じように使えるとは限らない
例えば広告に「土地面積80㎡」と書いてあったとします。土地の登記上の面積が80㎡であることと、80㎡すべてを建築計画上自由に使えることは、同じではありません。前面道路との関係でセットバックが必要になれば、建築できる範囲はその分後退します。
吹田市のように比較的コンパクトな土地に3階建てなどを計画するケースでは、この数十cmの違いが、駐車スペース、玄関位置、LDKの広さ、階段配置などに影響することもあります。だから私たちは、土地をご案内するとき、面積だけでなく「前の道がどういう道路なのか」を必ず確認するようにしています。
さらに注意。「道に見える=建築基準法上の道路」ではありません
ここは土地探しをされる方に、ぜひ覚えておいていただきたいところです。現地へ行くと、舗装されていて、人も車も通っていて、その道沿いに家もある。そうすると普通は「道路」だと思ってしまいます。
しかし、現地で道に見えることと、建築基準法上の道路であることは別問題です。吹田市が公開している指定道路図でも、着色されていない路線は道路として扱われていない、あるいは判定が明確でないものとされています。判定が明確でない場合は、市への調査が必要になることがあります。さらに吹田市自身が、指定道路図について「道路種別や接道を証明するものではない」と注意を促しています。道路幅員や境界位置まで示す資料でもありません。つまり、ネットの地図を確認しただけで「42条道路だから大丈夫」と判断するのは危険です。
接道していない土地は絶対に建てられない?
原則として、建築物の敷地は建築基準法上の道路に2m以上接する必要があります(接道義務)。ただし、この条件を満たしていなくても、一定の条件を満たし、交通上・安全上・防火上・衛生上支障がないと認められれば、建築基準法43条2項による認定や許可によって建築できる場合があります。
重要なのは、「昔から家が建っているから、次も建てられるだろう」では判断できないということです。吹田市では43条2項の認定・許可について事前相談を受け、現地調査をしたうえで、認定・許可・建築不可などを判断します。中古住宅を購入して「将来建て替えよう」と考えている場合にも、早めに確認しておきたいポイントです。
吹田で土地を買うなら、前面道路のここを確認
土地を見るとき、「道路幅◯m」だけで判断するのではなく、少なくとも次の5点は確認しておきたいところです。
- 建築基準法上の道路なのか
- 道路幅員はいくつなのか(現況だけでなく、どこを道路境界として扱うのかも重要)
- 敷地が道路に何m接しているのか(原則2m以上)
- セットバックが必要なのか(2項道路なら、建替え時に敷地の一部を道路として扱う可能性)
- その条件で希望する家が建つのか
道路条件を確認する目的は、法律用語を覚えることではありません。その土地に、自分たちが建てたい家を本当に建てられるのかを確認するためです。
細い道路も、吹田という街の歴史の一部です
細い道路というと、「道が狭い=悪い土地」と思われるかもしれません。でも、私はそう単純には考えていません。内本町や南高浜町の路地、山田や佐井寺に残る旧集落。それらは、吹田という街が長い時間をかけて形成されてきた証でもあります。
一方で、土地や住宅を購入するとなれば、歴史だけでは済みません。その道が建築基準法上どのような道路なのか、セットバックは必要なのか、敷地はきちんと接道しているのか、建替えはできるのか、そして希望する家が建つのか。正直なところ、この調査には時間も手間もかかりますし、「思っていたより建てられる範囲が狭かった」というケースも実際にあります。それでも、そこまで調べて初めて「この土地を買って大丈夫なのか」が分かります。
私は吹田で土地をご案内するとき、駅からの距離や土地の広さだけを見ているわけではありません。前の道路を見ながら、「この道はどうやってできた道なんだろう」と考えることがよくあります。道路一本にも、その街の歴史があり、その土地で家を建てるための条件があります。
吹田で土地探しをされる際には、ぜひ物件資料に書かれた「前面道路」の欄にも注目してみてください。そこには、土地面積や価格だけでは分からない、その土地の大切な情報が隠れています。
今 利之(こん としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティング担当
2005年入社。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、建築の各部門を経て、現在はマーケティング担当として吹田市の土地・住宅情報を発信しています。
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アイワホーム株式会社
本社:大阪府吹田市高浜町9-9 アイワステーションビルⅤ号館
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