家を建てる前に必ず行われる「地盤調査」。
その結果、
「今回は地盤改良が必要です」
と言われることもあれば、
「この土地は地盤改良なしで大丈夫です」
となることもあります。
そこで、ときどきお客様から出てくるのが、こんな疑問です。
「隣の家は地盤改良をしていたのに、うちはしなくて本当に大丈夫?」
確かに、すぐ隣の土地なのに結果が違えば、不安になるのも当然です。
しかし実は、地盤改良の必要性は「この地域の地盤が強いか、弱いか」だけで決まるものではありません。特に吹田市は、北部の千里丘陵から南部の低地まで地形の変化が大きく、さらに宅地造成による盛土なども存在する街です。
今回は、地盤調査では何を調べているのか、なぜ隣の家と結果が違うことがあるのか、そして吹田市で土地を見るときに地盤をどう考えればよいのかを解説します。
この記事でお伝えしたいこと
- スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)が調べる「硬さ」と「沈下・不同沈下」のリスク
- 敷地境界を越えると地層や造成履歴(切土・盛土)が変わる理由
- 吹田市の地形特性(北部の千里丘陵・中部の砂礫台地・南部の低地)と大規模盛土造成地マップの見方
- 「田んぼ跡=必ず改良」「高台=安心」とは言い切れない地盤判断の現実
- 地盤改良のやりすぎ注意:将来の建替え時に生じる地中改良体(残置・撤去)の課題
そもそも地盤調査では何を調べている?
戸建住宅の地盤調査で広く使われている方法の一つが、スクリューウエイト貫入試験(SWS試験)です。
以前は「スウェーデン式サウンディング試験」と呼ばれていましたが、2020年のJIS改正によって現在の名称に変更されました。
先端にスクリュー状の器具を付けたロッドを地面に貫入させ、どの程度の荷重で沈むのか、何回転させれば地中に入っていくのかなどを測定します。簡単にいえば、地面の下に、どの程度の強さの地盤が、どの深さに存在しているのかを調べる方法です。
ただし、ここで大切なのは、「地盤調査=地面の硬さだけを測っている」わけではないということです。住宅を安全に支えられるかを考えるには、建物の荷重を支えられるかだけでなく、建築後に地盤が沈んだり、場所によって沈み方が異なる「不同沈下」が起きたりする可能性も考える必要があります。
「この数値以下なら地盤改良」ではない
地盤調査結果には、さまざまな数値が並びます。そのため、「ある数値を下回ったら地盤改良、上回ったら不要」という機械的な判定だと思われるかもしれません。
実際には、そこまで単純ではありません。地盤改良の必要性を考えるときには、
- 地盤がどの程度の荷重を支えられるか
- 弱い地盤がどの深さまで続いているか
- 弱い層が部分的なのか広範囲なのか
- 沈下や不同沈下のおそれがないか
- どのような建物を建てるのか
- どのような基礎を採用するのか
などを総合的に見て判断します。つまり、「地盤が弱い・強い」の一言だけで、地盤改良の有無が決まるわけではないということです。
なぜ「隣は地盤改良、うちは不要」が起こる?
ここが今回、一番お伝えしたいところです。
地面の下は、道路や敷地境界のように、きれいに区切られているわけではありません。地盤は長い年月をかけて形成され、河川の流れや地形の変化、そして人による宅地造成などによって、現在の状態になっています。そのため、隣接する土地でも、地層や地盤の状態がまったく同じとは限りません。
さらに住宅地では、もともとの地形だけでなく、「切土」と「盛土」も重要です。丘や斜面を削って平らにした部分が「切土」。谷や低いところへ土を入れて平らにした部分が「盛土」です。一つの住宅地の中でも、切土部分、盛土部分、あるいはその境界に位置する敷地が存在する場合があります。
私自身、新築の現場を数多く見てきましたが、まさに一区画違うだけで調査結果がまったく異なるケースを何度も経験しています。同じ分譲地の中でも、造成の際にどこの土をどこへ動かしたかによって、地盤の状態は敷地ごとに変わってくるのです。
ですから、「隣の家が地盤改良をしていたから、自分の土地にも必ず必要」とは限りません。もちろん逆も同じです。「隣が地盤改良をしていないから、ここも大丈夫」とも言い切れません。最終的には、これから家を建てるその敷地を調査して判断することが重要です。
「吹田市は地盤が強い?」には一言で答えられない
吹田市で土地を探している方から、「吹田市って地盤は強いんですか?」と聞かれることがあります。実は、これも一言では答えにくい質問です。
吹田市の資料によると、市の北部は標高20~116mほどのなだらかな千里丘陵、南部は安威川・神崎川・淀川などによって形成された標高10mほどの低地となっています。
さらに詳しく見ると、吹田市の地形は大きく、丘陵地・台地・低地などに分類されます。中央部から北側には千里丘陵が広がり、丘陵地の南東部やJR東海道本線沿いなどには砂礫台地、南部には扇状地や三角州などの低地が分布しています。つまり、同じ「吹田市」という住所でも、土地が形成されてきた過程は一様ではありません。
「高台だから安心」「低地だから弱い」とも限らない
ここでも注意が必要です。つい、
高台=地盤が良い
低地=地盤が悪い
と考えてしまいがちですが、実際の地盤はそこまで単純ではありません。
例えば千里丘陵には、宅地開発によって造成された場所が数多くあります。吹田市が公表している「大規模盛土造成地マップ」では、市内に、谷埋め型と腹付け型を合わせて数百か所規模の大規模盛土造成地が抽出されています(具体的な箇所数は吹田市の最新の公表資料をご確認ください)。
ただし、この数字だけを見て、「盛土だから危険だ」と考えてはいけません。吹田市自身も、このマップは大規模盛土造成地のおおむねの位置と範囲を示したものであり、危険な箇所を示すものではないと明記しています。重要なのは、その土地がどのような地形や造成履歴を持ち、現在どのような地盤状態になっているのかを見ることです。
「昔は田んぼだったから地盤改良が必要」も決めつけられない
土地探しをしていると、「ここは昔、田んぼだったらしい」「川の近くだから地盤が弱いのでは?」といった話を耳にすることがあります。昔の地形や土地利用を調べること自体は、とても意味があります。
しかし、昔田んぼだった=必ず地盤改良が必要、ではありません。反対に、昔から住宅が建っていた=調査しなくても大丈夫、でもありません。
昔の地図や地形、土地利用、周辺状況は、その土地を理解するための大切な材料です。ただ、それだけで現在の地盤改良の必要性まで判断することはできません。だからこそ、家を建てる前に実際の敷地を調査します。
地盤改良は「やればやるほど安心」ではない
調査の結果、住宅を安全に支えるための対策が必要と判断された場合には、地盤の状態に応じて地盤改良を検討します。代表的な方法としては、表層改良や柱状改良などがあります。どの方法が適しているかは、弱い地盤の深さや状態、建物条件などによって異なります。
一方で、「地盤改良をしている家=していない家より安全」という単純な比較もできません。地盤改良が必要ないと適切に判断された土地であれば、改良しないこと自体に問題があるわけではありません。
国土交通省も、住宅瑕疵担保責任保険に関するQ&Aで、現地確認や地盤調査によって問題がなければ、地盤改良を行う必要はないとしています。また、地盤保証制度についても、住宅瑕疵担保責任保険へ加入するための必須条件ではありません。
大切なのは、「改良したか、しなかったか」ではなく、その土地と建物に必要な対策が適切に選ばれているかです。
実は、地盤改良には「家を壊した後」の話もある
ここでもう一つ、あまり知られていない視点があります。
住宅はいつか建替える日が来ます。ところが、柱状改良などによって地中につくられた改良体は、住宅を解体したからといって自動的になくなるものではありません。将来、新しい住宅を建てる際には、地中に残っているものをどう扱うのかという検討が必要になる場合があります。
- 既存のものを生かせるのか。
- そのまま残して新しい建物を計画できるのか。
- 場合によっては撤去する必要があるのか。
建物の位置や大きさ、基礎計画が変われば、数十年前の地盤対策と新しい住宅との関係も変わってきます。国土交通省も既存杭について、建替え時には「再利用」「撤去して埋め戻す」「残置して新たに施工する」といった選択肢があり、それぞれに設計・地盤・コスト上の課題があることを整理しています。
※既存杭と住宅の柱状改良体は同じものではありませんが、「建物を解体したあとも地中に残るものを、次の建築でどう扱うか」という点では共通する課題があります。
だからこそ、地盤改良についても、「とりあえずやっておけば安心」ではなく、必要なときに、必要な方法で行うという考え方が大切なのです。この「地盤改良した土地を30年、40年後に建替えるとどうなるのか?」については、話がかなり深くなるので、また別の記事で詳しく取り上げたいと思います。
地盤調査は、住宅を支える大切な判断材料
2026年7月、大和ハウス工業の子会社・大和ランテックが、業務委託先から提出されたデータの加工や他現場データの転用などによって、816件の地盤調査報告書を不適切に作成していたことを公表しました。
もちろん、この事例だけをもって地盤調査業界全体に問題があるという話ではありません。むしろ、このニュースから改めて分かるのは、地盤調査が住宅の安全性を考えるうえで、それだけ重要な判断材料だということではないでしょうか。
完成した住宅では、地盤は見えません。だからこそ、建築前にきちんと調査し、その結果を適切に評価することが重要です。
吹田市で土地を探すなら「地盤が良い町」を探せばいい?
では、吹田市でこれから土地を探す場合、「地盤が良い地域を教えてください」と聞けばよいのでしょうか。もちろん、周辺の地形や地質、過去の土地利用を確認することには意味があります。
ただし、「○○町だから大丈夫」「この地域だから地盤改良が必要」と住所だけで判断することはおすすめできません。土地を見るときには、
- 現在の地形
- 敷地や周辺道路との高低差
- 擁壁の有無
- 過去の地形や土地利用
- 盛土造成地などの公開情報
- ハザードマップ
なども確認しておく。そして最終的には、建物を建てる前の地盤調査によって、その敷地の状態を確認する。このように段階を分けて考えるのが現実的です。
まとめ|「隣がどうだったか」より、その土地をきちんと調べる
隣の家が地盤改良をしていたからといって、自分の土地にも必ず地盤改良が必要とは限りません。反対に、隣の家が地盤改良をしていなかったから、自分の土地も大丈夫とは言えません。
地盤の状態は、地層、造成履歴、弱い層の深さ、建物条件など、さまざまな要素を踏まえて判断されます。そして吹田市は、千里丘陵、台地、河川沿いの低地、さらに切土や盛土による造成地など、さまざまな成り立ちを持つ土地が存在する街です。
だから、「吹田市の地盤は強いですか?」という質問に対して、「吹田市なら大丈夫です」とも、「この地域は弱いです」とも簡単には言えません。
大切なのは、その土地について、きちんと調べること。そして、その結果に応じた対策を選ぶこと。
家づくりでは、間取りや設備、デザインなど、目に見える部分にどうしても意識が向きます。しかし、その住宅を何十年も下から支えているのは、地盤と基礎です。「地盤改良をしたかどうか」だけではなく、なぜ、その判断になったのか。そこまで知ることが、安心して家を建てるための大切なポイントではないでしょうか。
そしてもう一つ。もし地盤改良をした家を、30年後、40年後に建替えることになったら、その地中に残ったものはどうなるのか?これは家を建てるときには、ほとんど考えない話かもしれません。次回は、この「地盤改良した家の、その後」について詳しく掘り下げてみたいと思います。
今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社、吹田の地で21年。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門など、現場の最前線で歩んできました。
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アイワホーム株式会社
本社:大阪府吹田市高浜町9-9 アイワステーションビルⅤ号館
フリーダイヤル:0120-359-395
※創業36年、吹田の地で家族の暮らしに寄り添う住まいづくりを。吹田の「今」と「これから」を、これからも。
