「外にいるときは普通につながるのに、家の中に入ると携帯電話の電波が少し弱くなる気がする」
新築の住宅現場を回っていると、こうした声を耳にすることがあります。
もちろん、携帯電話の電波状況は場所や通信会社、近くの基地局の位置などによって変わります。ただ、最近の新築住宅には、昔の家にはあまりなかった「電波に影響する可能性のあるもの」も使われるようになりました。
それが、Low-E(ローイー)複層ガラスです。
断熱性能を高めるため、今の新築住宅では当たり前のように使われているLow-Eガラス。実はこのガラス、携帯電話の電波を弱めることがあるのをご存じでしょうか。今回は、住宅会社の立場からLow-Eガラスと携帯電話の電波について掘り下げてみます。
この記事でお伝えしたいこと
- Low-E複層ガラスの表面にコーティングされた特殊金属膜の性質
- YKK APも公式FAQで明記している「携帯電話やラジオなどの受信障害」の可能性
- 外からの電波の主たる侵入口である「窓」と断熱性能の両立という課題
- 日本建築学会の実験研究(24GHz帯)やNTTドコモ×AGCのガラスアンテナ実証実験
- 電波状況のセルフチェック方法と、室内用中継器(ドコモレピータ等)による対策
- 外からの携帯電波と家の中のWi-Fi電波の違い(次回予告)
そもそも「Low-Eガラス」って何?
Low-Eとは、Low Emissivity(低放射)の略です。
普通の複層ガラスとの大きな違いは、ガラスの表面に非常に薄い特殊な金属膜が施されていること。この金属膜によって熱の伝わりを抑え、一般的な複層ガラスより高い断熱性能や日射遮蔽性能を実現しています。YKK APも、Low-Eガラスを「熱の伝わりを抑える特殊な金属膜をコーティングしたガラス」と説明しています。
- 冬は室内の暖かさを逃がしにくくする
- 夏は外からの日射熱を入りにくくする
住宅の省エネ性能を高めるうえでは非常に重要なガラスです。ところが、この特殊金属膜には別の性質もあります。
Low-Eガラスは携帯電話の電波にも影響する
これは噂ではありません。YKK APは公式FAQで、Low-E複層ガラスの特殊金属膜によって、携帯電話やラジオなどの電波の受信に障害が生じる場合があると明記しています。
つまり、「新築住宅にしたら携帯の電波が少し弱くなった気がする」という現象は、実際に起こり得ることなのです。
ここでポイントになるのが、窓は住宅の中へ電波が入ってくる重要な入口だということです。
携帯の電波は、主に窓から家の中へ入ってくる
携帯電話は、屋外にある基地局と電波をやり取りしています。家の中でスマートフォンを使う場合、その電波は建物の外から、
外壁や窓 → 室内 → スマートフォン
という経路で届かなければなりません。NTTドコモも、室内へ届く電波は主に窓から入ると説明しています。基地局の方向に大きな窓があれば電波は室内へ届きやすく、反対に窓の位置や大きさ、建物の材料によって室内の電波状況は変化します。
ここで少し不思議なことが起きます。昔ながらの普通のガラスなら、窓は比較的電波が通りやすい場所でした。ところが最近の住宅では、その窓に特殊金属膜を持つLow-Eガラスを使っています。住宅にとっては熱を通しにくくしたい。携帯電話にとっては電波を通してほしい。同じ窓に、この二つの要求が存在しているわけです。
普通のガラスとLow-Eガラス、どれくらい違う?
ここは少し驚く数字があります。
2025年に日本建築学会環境系論文集で公表された24GHz帯の実験(増子佑基氏ほかによる建築用ガラスの特性評価研究)では、一般的なフロートガラスとLow-Eガラスとで、電波を通過させたときの減衰量に大きな差があることが報告されています。
ただし、ここは誤解しないでください。この実験は24GHzという高い周波数帯で行われた特定条件の測定です。現在のスマートフォンが使っているすべての4G・5G電波について、「Low-Eガラスを通ると必ず大きく弱くなる」という意味ではありません。Low-E膜の種類、ガラス構成、電波の周波数、入ってくる角度などによって結果は変わります。
それでも、Low-Eガラスと普通のガラスでは、電波の通り方がかなり違う場合があることは分かります。
見た目は普通の透明なガラスなのに
ここが個人的には面白いところです。
Low-Eガラスを見ても、「これは電波を通しにくそうだな」とはまず思いません。普通の透明な窓ガラスに見えます。でも電波から見ると、表面には特殊な金属膜があります。
言い換えると、人間にはほぼ透明に見えていても、電波にとっては普通のガラスとは違うわけです。住宅の断熱性能がどんどん高くなってきたことで、こうした別の特性も注目されるようになっています。
携帯電話会社とガラスメーカーもすでに対策技術を開発している
この問題が興味深いのは、携帯電話会社とガラスメーカーがすでに対策技術の実証まで進めていることです。
2026年4月、NTTドコモとAGCは、電波の送受信ができる「ガラスアンテナ(WAVEATTOCH)」と、AGCが開発した電波透過処理技術を組み合わせ、既存建物のLow-Eガラスの室内側にガラスアンテナを設置する実証実験の結果を発表しました。これは、Low-Eガラスの窓そのものを一種のアンテナとして活用し、屋外の5G通信エリアを広げる(窓を基地局代わりに使う)ための技術で、実験では受信電力が約10dB、電力比で約10倍改善したとしています。
両社は以前から、断熱性能と電波透過性を両立する窓の研究にも取り組んでいます。つまり、「Low-Eガラスを使いながら、どうやって電波を届けるか」という研究が、実際に進んでいるわけです。
では、Low-Eガラスの家は携帯がつながらない?
ここは違います。Low-Eガラスを使っている=携帯電話がつながらない、ではありません。
実際の電波状況には、
- 基地局までの距離
- 基地局の方向
- 屋外での電波の強さ
- 窓の位置や大きさ
- 建物の周囲にある建物や地形
- 携帯電話会社
- 使用している周波数
など、さまざまな条件が関係しています。屋外で非常に強い電波が来ていれば、Low-Eガラスを通過して多少弱くなっても十分通信できます。逆に、外でももともと電波がギリギリという場所では、建物に入ったことでさらに弱くなり、「外では使えるのに家の中では不安定」という状態になる可能性があります。
同じ家でも携帯会社によって違うこともある
これもあり得ます。携帯電話会社によって基地局の場所や使っている周波数帯は異なります。そのため同じ住宅でも、A社のスマートフォンは問題なく使えるのに、B社は特定の部屋で電波が弱い、ということもあります。
つまり、「この住宅は電波が弱い」だけでは判断できません。建物と基地局との位置関係まで含めた話なのです。
「外では入るのに家の中だけ弱い」なら?
比較的簡単に確認できます。
- まず家の外で電波状況を見る
- 次に窓際
- そして部屋の中央へ移動する
- さらに窓を開けたときに変化するか確認してみる
これだけでも、建物の外皮による影響がありそうなのかを見る一つの手掛かりになります。ただし、スマートフォンに表示されるアンテナの本数だけで正確な電波強度を判断できるわけではありません。電波状況は時間帯などでも変化するので、一度だけ試して「Low-Eガラスが原因だ」と決めつけるのは禁物です。
電波が弱かったら、もうどうしようもない?
そんなこともありません。まずは契約している携帯電話会社へ相談する方法があります。
例えばドコモでは、窓際まで届いている基地局の電波を増幅し、室内の電波状況を改善する「ドコモレピータ」という設備を用意しています。携帯電話会社によって屋内電波を改善するための方法がありますので、「屋外では問題ないのに室内だけ弱い」という場合には、一度相談してみる価値があります。
それでもLow-Eガラスを使う意味は大きい
ここまで読むと、「それならLow-Eガラスじゃない方がいいの?」と思う方もいるかもしれません。そういう話ではありません。
Low-Eガラスには、
- 窓から逃げる熱を抑える
- 夏の日射熱を抑える
- 冷暖房効率を高める
といった住宅性能上の大きなメリットがあります。今の住宅にとって非常に重要な建材であることに変わりはありません。ただ、「高性能な窓には、こんな意外な特性もある」ということです。
家が高性能になると、今までなかったことも起こる
住宅は、この十数年でかなり変わりました。断熱性能が上がり、窓の性能も上がり、設備の性能も上がっています。Low-E複層ガラスも、その代表的な技術の一つです。
しかし性能を高めるために使われている薄い金属膜が、携帯電話の電波にも影響する場合がある。普段何気なく見ている窓ですが、実はこんなところでも現代の住宅性能と通信技術がつながっています。
私たちアイワホームでもLow-E複層ガラスを標準で採用していますが、だからといって「Low-Eだから携帯がつながらない」と考える必要はありません。大切なのは、電波が弱いと感じたとき、携帯会社だけでなく「家そのもの」が電波に影響している可能性もあると知っておくことです。
そして実は、似ているようでまったく別なのがWi-Fiの電波です。携帯電話は「家の外から入ってくる電波」。Wi-Fiは「家の中で飛ばす電波」。3階建て住宅では、こちらはルーターをどこに置くか、LAN配線をどこまで準備するかが重要になってきます。この話は、また別の記事で詳しく取り上げたいと思います。
今 利之(こん・としゆき)
アイワホーム株式会社 マーケティングディレクター
2005年入社、吹田の地で21年。新築営業・リフォーム・メンテナンス、賃貸、工事部門など、現場の最前線で歩んできました。
■ 1日でも早く、理想の暮らしへ 🏃💨
好条件の物件は、検討される方が重なる傾向にあります。
「まずは話を聞いてみたい」という気軽な気持ちで、一歩踏み出してみませんか?
【公式LINEで気軽に相談】
物件の詳細や、内覧のご予約はLINEが一番スムーズです。
👉 https://lin.ee/HTvVmlL
【アイワホーム公式サイト】
施工事例を見て、新しい暮らしのイメージを膨らませてください。
👉 https://aiwahome.com/
■ 吹田の「今」をチェック!
吹田を愛する私たちが運営する、地元の耳寄り情報サイトです。
吹チャン!: https://suichan.jp/ 📢
■ 公式SNSでルームツアー公開中 🎥
Instagram: https://www.instagram.com/aiwahomesuita/
YouTube: https://www.youtube.com/channel/UC4TWLt5U3X3ls6mDPsYIY8A
アイワホーム株式会社
本社:大阪府吹田市高浜町9-9 アイワステーションビルⅤ号館
フリーダイヤル:0120-359-395
※創業36年、吹田の地で家族の暮らしに寄り添う住まいづくりを。「吹田の暮らしに、寄り添う住まいづくりを。」
